ハリウッドの映画業界人が注目する“ブラックリスト”って?
ハリウッドに「ザ・ブラックリスト」というリストが存在することをご存知だろうか。ネーミングから、何やら怖くて危ないリストなのではと、つい勘ぐってしまいそうだが、その正体は未製作で流通する映画脚本のランキングのこと。毎年、ハリウッドの映画会社やエージェントなどが人気投票するシステムで、業界内での信頼は非常に厚い。このリストが発端となって製作へつながるケースも増えており、近年のアカデミー賞ではリストに載った作品も数多く受賞している。まさに業界ウケしている優秀な脚本がそろっているのだ。
過去にブラックリストにランクインした作品を見てみると、『JUNO ジュノ』(07)、『スラムドッグ$ミリオネア』(08)、『(500)日のサマー』(09)、『英国王のスピーチ』(10)、『ソーシャル・ネットワーク』(10)など、映画ファンからの評価が高く、賞レースにも絡んだ良作ばかり。見た目の派手さではなく、時系列に凝った構成やみずみずしい会話の応酬など、内容で勝負している作品であることが特徴として挙げられるだろう。
そんなブラックリストの脚本を元につくられた映画『デンジャラス・ラン』が9月7日(金)に公開される。デンゼル・ワシントン演じる元CIA諜報員の指名手配犯が、ライアン・レイノルズ扮するCIAの新人職員を巻き込んで大逃走劇を繰り広げるサスペンスアクションだ。前述のリストの作品群とはちょっと毛色が違うアクション大作だが、もちろん内容の質の高さは保証済み。本作でデビューを飾ったデヴィッド・グッゲンハイムが手がけた脚本は、業界で話題を呼び、2010年版ブラックリストでは5指に数えられている。油断できない伝説の犯罪者と共に、忍び寄る黒幕の追っ手を逃れ、真相を探っていくスリルは一級品で、息もつかせぬ物語展開にぐいぐいと引き込まれてしまうはずだ。
そして『デンジャラス・ラン』の成功でグッゲンハイムは超売れっ子になり、彼の新作脚本が次々とメジャーに買い上げられているのもまた面白い。11月10日(土)に公開されるニコラス・ケイジ主演&サイモン・ウェスト監督の『ゲットバック』や、ロン・ハワード監督の『364(原題)』、マックG監督の『Puzzle Palace(原題)』、さらに先日亡くなったトニー・スコット監督が新作として用意していた『Narco Sub』も彼の手によるもの。まさにリストから始まった夢のようなサクセスストーリーが展開している。
手に汗握る派手なアクションやチェイスシーンも満載だが、ひと癖もふた癖もあるストーリーで大いに楽しませてくれる『デンジャラス・ラン』。劇場でそのスリリングな物語を体感してほしい。【トライワークス】