BBC「フローズン プラネット」のエリザベス・ホワイト監督「シャチは非常に素晴らしく面白い生物です」|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
BBC「フローズン プラネット」のエリザベス・ホワイト監督「シャチは非常に素晴らしく面白い生物です」

インタビュー

BBC「フローズン プラネット」のエリザベス・ホワイト監督「シャチは非常に素晴らしく面白い生物です」

BBCが誇るプラネットシリーズは「ディープ・プラネット」「プラネットアース」、そして今回BD&DVDが発売された「フローズン プラネット」の3部から構成されるビッグプロジェクトだ。過去2作はそれぞれ『ディープ・ブルー』(03)、『アース』(11)として劇場公開され、日本でもヒットした。本作の「フローズン プラネット」は北極と南極の両極に特化し、撮影総日数は2356日、製作期間も4年に及ぶ。北極圏内全ての国にわたって撮影された映像に加え、未だかつてないほど網羅した南極圏の映像を収めることに成功した唯一の作品となった。今回、プロモーションで来日した本作の監督の一人でもあり、動物行動学の博士号を持つエリザベス・ホワイトに話を聞いた。

――本当に素晴らしく、私たちが実際に行けない両極の質の高い映像に感動しました。今回、北極と南極に絞っていますが、その理由を聞かせてください

「『プラネットアース』を作ったプロデューサーのバネッサ・バロウィッツ、アラステア・フォザギルと、これまでに地球全部を撮ったので、映画的アプローチで何か取れないか、という話をしていました。その時に、(第8集の)『Ice Worlds』のエピソードがとても人気が高く、さらに北極と南極の表面しか撮影していなかったので、この両極は刻々と変化しているし、今まさに起こっている変化を撮るにふさわしい場所でした。さらに映画的な撮り方をするのに一番良い場所でもあり、また人が簡単に行けないという意味でも理想的な場所でした」

――撮影期間が2356日と気が遠くなる日数ですが、まさに氷点下の戦いで苦労の連続だったと思います。なかでも一番困難だったのは何でしょう?

「私個人としては2年間に4週間ぐらいを撮影に費やしました。比較的、それほど大変ではありませんでした。ほぼ沿岸部のロケで、また夏だったので、海の水が温かさを運んでくれたから、他の同僚たちよりも温かい状態でした。私にとって最も寒い時はマイナス44度でしたから。もっともっと寒いロケクルーもいました。チームで一番過酷だったと私が思うのが、ケープ・クロージアでのアデリーペンギンの撮影です。ふたりの男性が4ヶ月間費やして、小さな小屋で過ごしたのですが、周囲には50万羽のアデリーペンギンのみ。肉体的にはもちろん、精神的にもかなり大変だったと思います。私が経験したなかで精神的に大変だったのは、こういう映像が撮りたいのに、動物たちがその行動を取ってくれないという待ち時間でした。肉体的には氷の下でのダイビングで、寒いのと着すぎるぐらいいっぱい着て、道具をつけないといけないのでとにかく重かったことですね」

――ダイビングがお得意だということですが、氷の下に潜ってみて感動した光景は何でしょう?

「今回、それほど色々なところで潜ったわけではないのですが、私が潜ったロシアの北極圏の海で、海底にはたくさんの動物がいたわけではなく、巻き貝やクリオネのような生物がいたりしましたが、それよりも氷を形成していくところが興味深かったですね。南極の氷の下を撮ったカメラマンがいるのですが、南極は独特の海洋動物がいるので本当に素晴らしかったという話を聞いています。私もかつて南極でダイビングしたことがありますが、氷山の美しさといったら本当に素晴らしいという言葉以外出てきません。ブルークリスタルのように氷山が見えるんですよ。そこから小さな泡が出たりしていて本当に美しいです」

――動物行動学の博士号をお持ちの監督ですが、本作でも様々な動物が出てきますね。そのなかで一番好きな動物と嫌いな動物は?

「選ぶのはなかなか難しいですが、一番好きなのはシャチですね。生物学者としても、非常に素晴らしく面白い生き物です。今回の撮影で色々と新しいことがわかりましたし、科学にも貢献できたと思います。そしてシャチにも色々な種類がいることもわかりました。それから、ホッキョクドクガの幼虫。14年間も幼虫でいて、何度も冷凍され、そして解凍され、本当にすごいなあと思いました。逆に、嫌いというよりも一番怖かったのがヒョウアザラシで、ダイビングしている時にすぐ横にいて非常に怖いと思いました。ヒョウアザラシがペンギンを狩っているところを見ていて、本当に恐ろしいと思いましたし、どこかエイリアンのようなところがあります。個人的にはホッキョクグマよりも怖いと思っています」

――私も今回の映像でシャチの生態を見て本当に驚きました。まさに天才的なプレデターでした

「私たちは捕食動物=狩りをする動物ということでプレデターという言葉を使っています。シャチはプレデターのなかでも、本当に複雑なチームワークを持つ種類で、独自の文化を持っているような感じですね。また、方言のようなものも種類によって持っていると思います。彼らがミンククジラを狩るところを見ていましたが、2つのグループがいて、それらは共に行動していたのですが、一緒に行動するに当たっては何かコミュニケーションを取っていたと思うのです。それは音ではない何か、音を出すとクジラに気付かれてしまうので、いったいどうやって水中でコミュニケーションを取っているのか?理解しようとしましたが、なかなか難しいですね」

インタビュー後半に続く 【Movie Walker】

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★エリザベス・ホワイト プロフィール
イギリスに本拠を構え、BBC EARTH作品を制作するBBCナチュラル・ヒストリー・ユニットでプロデューサーと監督を兼務。ブリストル大学で、動物行動学の学位と博士号を取得し、2003年大学卒業。研究テーマの“魚のビジョンと視覚的行動”を進めながら、パートタイムでBBC EARTHのプラネットシリーズ第1弾「ブルー・プラネット」の制作に参加。2004年に正式にBBCに入社。
カメラマンとしての素質に恵まれ、スキューバダイビングも得意であった彼女は熱帯地方から極地まで、世界のあらゆる場所で撮影を経験。画期的なネイチャードキュメンタリー番組から映画などで、幅広く活躍。2010年、ワイルドスクリーン・ワイルドライフ映画祭で自身が制作した短編『The Coral Gardener』がベスト短編映画賞を受賞。2007年から2011年まで、極地の風景、そしてそこに息づく生き物たちや人々を追った大型ネイチャードキュメンタリーシリーズ「フローズン プラネット」の監督の一人として活躍する。

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