ここまで違う!鬼才と巨匠が描くアメリカ激動時代
一つの題材で何本もの映画が作られることは珍しくないが、ここまで違う雰囲気に仕上がってしまうケースは稀だろう。鬼才クエンティン・タランティーノ監督による『ジャンゴ 繋がれざる者』(3月1日公開)と、巨匠スティーヴン・スピルバーグ監督による『リンカーン』(4月19日公開)は、19世紀のアメリカという舞台設定こそ同じだが、それぞれの監督の色が如実に出たものとなっている。
両作とも19世紀アメリカという時代を描くに当たり、切っても切り離せない“奴隷解放”“南北戦争”がモチーフになっている。『ジャンゴ』は賞金稼ぎのギャングを主人公に、ハードボイルド調のワイルドな演出でユーモアを交えながら小気味良いテンポで進み、一方の第16代アメリカ大統領を主人公にした『リンカーン』は、人民の自由という大きなテーマに挑んだ圧倒的なスケールで描かれる感動巨編となっている。
ふたりの監督がこれまでの作品で築いてきたイメージや個性をそのまま反映させたような内容になっており、同じモチーフだからこそ、その描き方の違いが手に取るようにわかるのが楽しい。現代を代表する鬼才と巨匠が、奇しくも同じモチーフに挑んだ作品。タランティーノとスピルバーグの個性を浮き彫りにする絶好の機会をお見逃しなく。【トライワークス】
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