“実写版ジブリ”と話題の映画、実際にはどれだけ似てる?
今年の第85回アカデミー賞で作品賞を含む主要4部門にノミネートされるなど、インディペンデント映画としては異例の快挙を成し遂げた『ハッシュパピー バスタブ島の少女』(4月20日公開)。既に世界中で高い評価を得ているが、日本の関係者や著名人の中で目立つのが「まるで実写版ジブリのよう」というコメントだ。
“バスタブ”と呼ばれる島を舞台に、素朴ながら活気に満ちた生活を送る少女の視点で描かれる本作。生態系の変化や水位の上昇が囁かれ、島に住み続けることが危険視されるなか、百年に一度の大嵐に襲われてしまう。少女の成長を描いた『となりのトトロ』(88)や『魔女の宅急便』(89)、自然と文明の対立を扱った『風の谷のナウシカ』(84)や『もののけ姫』(97)などの作品があるように、本作はテーマそのものがジブリ的で、宮崎駿作品っぽいといえるのだ。
劇中に目を向けると、“水”が頻繁に登場する点も見逃せない。これは宮崎駿&高畑勲コンビの初期作『パンダコパンダ 雨ふりサーカス』(73) や、最近の『千と千尋の神隠し』(01)、『崖の上のポニョ』(08)など、宮崎アニメのなかで度々登場するモチーフだ。また、終盤に登場するイノシシを巨大化させたような怪物オーロックスは『もののけ姫』の猪神と姿が似ている。さらに、この世の終焉を暗示させるようなオーロックスたちの行進は、猪神だけでなく「ナウシカ」の王蟲の暴走も彷彿とさせるだろう。
リアリティとファンタジーが巧みに織り交ぜられた本作で長編デビューを果たしたベン・ザイトリン監督は、「この映画を作った時は、まだ『千と千尋の神隠し』しか見たことがなくて、あの作品が意識的な影響だとは特に思わなかったけど、直接言われることが本当に多くて」と周囲から指摘されたことを明かした。そして、「他の映画も見てみたら、心底ほれてしまった。自然神話に対して、我々(ベンと宮崎)はとても似たイマジネーションを抱いているのだと感じます」とも分析している。
日本人にはなじみ深いジブリ作品のエッセンスが詰まった『ハッシュパピー バスタブ島の少女』。監督が認めているとおり、宮崎アニメとの共通点は幾つも見つかるはずだ。“実写版ジブリ”と評される理由を、劇場で確かめてみてはいかがだろうか。【トライワークス】