第66回カンヌ国際映画祭審査員賞獲得の『そして父になる』、英米メディアの評価は?
是枝裕和監督の『そして父になる』(10月5日公開)が、現地5月26日に閉幕した第66回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞したが、辛口の映画レヴューで知られている英紙ガーディアンのピーター・ブラッドショーは、受賞作予想記事のなかで、日中合作映画で賈樟柯(ジャ・ジャンクー)監督の『A Touch of Sin』(脚本賞を受賞した)が審査員賞を獲るだろうと書いていた。「中国の消費主義への超バイオレントな攻撃とも言える素晴らしい作品」として、同作に4つ星をつけたブラッドショーは、『そして父になる』には3つ星をつけ、「良質の仕事ではあるが、是枝監督の『奇跡』(11)、『歩いても 歩いても』(08)ほど、独特の匂いはしない」と評していた。
一方、英紙テレグラフのロビー・コリンは、『そして父になる』に最高の5つ星をつけ、「日本映画が最も得意としてきたテーマは家族だ。小津安二郎が『大人の見る繪本生れてはみたけれど』(32)を撮ってから80年も経てば、もはや使い古されたテーマだろうと思うが、是枝監督はフレッシュな切り口を見つけた。彼は小津の後継者である」と絶賛している。
また、米国版ハフィントン・ポストは、「現代的なセットの中で撮られた美しい映画。日本の住宅のリビングルーム、公園、商店街。カンヌの観客たちは、この映画の形式の純粋さと、血の繋がりの意味という、非常に現代的なテーマに魅了された」と書き、Hollywood Reporterは「本作の意図された焦点は、一人の男性が抱える、他者と親密になることができないという問題であり、その再生とも言える変身が素晴らしい感動を与える」と評している。
カンヌ国際映画祭の審査員賞は、実質的にはパルム・ドール、審査員特別グランプリに次ぐ3番目に栄誉ある賞とされており、2012年は『天使の分け前』(12)で英国のケン・ローチ監督が受賞している。【UK在住/ブレイディみかこ】