『タイピスト!』の美人女優が明かす、キュートなドレス秘話
1950年代のフランスを舞台に、ドジで不器用なヒロインのサクセスストーリーを描く『タイピスト!』(8月17日公開)。ポップでカラフルな世界に、とびきり可憐な主人公・ローズが登場。スクリーンを明るい笑顔で満たしてくれる。そこで、ローズ役を演じたベルギー出身の注目女優、デボラ・フランソワを直撃。元気の源を聞いた。
女性たちが自由を求めて、社会へと飛び出そうとしていた時代。ローズは、憧れの職業である秘書になるために奮闘するが、そのなかでタイプライターの早打ちを競う大会に出場。世界大会に挑むこととなる。女性の成長物語をタイプ早打ち大会と重ね合わせた点がなんともユニークだが、デボラも「タイプの早打ち大会をテーマに映画を描くなんて、聞いたこともないし、これは面白いと思ったの!」と目を輝かせる。
すっと伸びた背筋、好奇心に輝くような瞳、愛らしい笑顔。エレガントさとキュートさが同居した彼女に、ローズ役はまさにハマリ役だ。ローズの印象を聞くと、「スカートを履いた戦士」と表現した。「脚本を読んで、『彼女のことが大好き』って思ったわ。落ち込みやすくて子どもっぽいところもあるんだけれど、強い意志を持っているの。自分のやるべきことに何が何でもしがみついて、諦めないという姿は、とてもチャーミングよ」。
映画を彩るのは、1950年代のレトロで可愛らしい雰囲気だ。ローズ役を演じる上でも「一番大事にしたのは、50年代のコンテクストからはみ出さないようにすること」という。「50年代に沿った形でローズが存在するように、時代考証はしっかりとやったわ。あと、テクニカルな面でもチャレンジの多い作品だった。タイプの早打ちは3ヶ月くらい練習したし、ピアノもダンスも練習しなければいけなくて。(レジス・)ロワンサル監督や、(相手役の)ロマン・デュリスとも議論を重ねて、準備万端にして撮影に臨んだわ」。
Aラインのスカートやリボンを施したドレスなど、時代背景にこだわったファッションにも、女性ならうっとりすること間違いなしだが、デボラは「クライマックスで着たピンクのドレスが、一番のお気に入りなの」と笑顔を見せた。「ある日、衣装係の人がとっても素敵なピンク色の生地を見つけてきてくれて。監督は、『主人公の名前がローズで、ドレスもローズ色だと月並みじゃないか』と言ったんだけれど、もう、私も女性スタッフ陣もみんな、その生地に釘付けになってしまっていて(笑)。『素敵なピンク色!絶対に使おう!』と、監督を説得したの。それからというもの、『プリーツを増やして、他のどのドレスよりも、ふわっとお花のような広がりをつけてほしい』とか、衣装さんがちょっと困るくらい、色々なリクエストをさせてもらって。とても思い入れの多いドレスよ」。
ロマン・デュリス演じる年上男性・ルイとの出会いにより、自分の可能性に気付き、輝いていくローズ。デボラは17歳から女優の道を歩み始めたというが、自身の成長に手助けとなってくれたものは何だろう。「一番大きかったのは、『自分にとってベストな選択をできるのは、自分しかいないんだ』と気付いたことね。それに気付いてからは、自分に自信が持てるようになったわ。それまでは、人の言ったことを何でも受け入れたり、失敗を恐れたり、他人の方が自分よりベストな選択をしてくれるかもしれないと思ったり、とにかく受身だった。キャリアを重ねて、たくさんの人と出会っていくうちに、徐々に自分に自信が持てるようになったのよ」。
地に足をつけ、力強く女優道を歩んでいるデボラ。パワーの源となっているものを訪ねると、こう話してくれた。「私は小さい頃から、両親に『やるなら、とことんやれ』と教えられてきたの。女優という道に進んだ時も、家族はとっても心配していたんだけれど、その心配を決して口にはしなかった。『やるなら、とことんやりなさい』と言ってくれて、その家族の言葉と応援が、夢を叶えていく力になっているのよ」。
軽快なタイプの音のなかから、女性への熱いエールが飛び出してくる本作。ローズ、そしてデボラ・フランソワの“夢を叶える力”にたっぷりと酔いしれてほしい。【取材・文/成田おり枝】