第87回アカデミー賞候補発表!サプライズは?

映画ニュース

第87回アカデミー賞候補発表!サプライズは?

現地時間の15日に、第87回アカデミー賞ノミネーションが発表され、コメディ『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(4月公開)と『グランド・ブダペスト・ホテル』(14)が最多の9部門でノミネートを果たした。

今年も、サプライズノミネートやサプライズ落選について、ピープル誌、ロサンゼルス・タイムズ紙、米ABCテレビ、Usウィークリー誌、USAトゥデイ紙など10社以上の情報をもとにまとめてみた。

今回、一番のサプライズだったのは、2009年以降最大10作品に枠が広げられた作品賞で、事前に高い評価を得ていた『ゴーン・ガール』(14)『フォックスキャッチャー』(2月14日公開)『イントゥ・ザ・ウッズ』(3月14日公開)『Nightcrawler(原題)』(夏公開)などの秀作があったにもかかわらず、8作品しか選ばれなかったことだ。

なかでも予想外の総スカンを食らったのが、デヴィッド・フィンチャー監督作『ゴーン・ガール』で、作品賞、監督賞、ノミネートが確実視されていた脚色賞でも落選し、主演女優賞(ロザムンド・パイク)のみとなった。

これについては、10月のニューヨーク映画祭でお披露目された際に、「特に高齢者から不評だった」ことに加えて「オスカー会員のベン・アフレック嫌いが明確になった」との声もある。また『フォックスキャッチャー』に関しては、チャニング・テイタム扮するマーク・シュルツが、自らの描かれ方を不服としていると報じられたことも、多少の影響があるのかもしれない。

また、今回はかねてから問題視されている、「高齢者の白人男性が多いオスカー会員の白人至上主義、男性至上主義が顕著に表れた結果」ともいわれている。

昨年、黒人のリー・ダニエルズ監督作『大統領の執事の涙』(13)が総スカンを食らった一方で、黒人のスティーブ・マックイーン監督作『それでも夜が明ける』(13)が作品賞、監督賞などで初受賞を果たしたことが大きなニュースになった。

特に今年は、昨年米ファーガソンで黒人の子どもが白人警官に射殺されて以来、黒人と白人の対立が激化しているという社会的な背景を受け、『Selma(原題)』に注目が集まっていた。しかしふたを開けてみれば、作品賞には選ばれたものの、主演男優賞の有力候補だった黒人俳優デヴィッド・オイェロウォ、黒人女性初のノミネートが期待されていたエヴァ・デュヴルネ監督もノミネートされなかった。

作品賞のノミネートもプロパガンダだという声もある一方で、『それでも夜が明ける』と同様に、「同作もブラッド・ピットがプロデューサーを務めていることもノミネートの要因だった」という少々ネガティブな見方もあるようだ。

また長編アニメ映画部門で、日本人にとっては快挙となったスタジオジブリの高畑勲監督の『かぐや姫の物語』(14)がノミネートされたことがサプライズとされる一方で、アメリカの代表作で大ヒット作である『LEGO(R) ムービー』(14)がノミネートされなかったことは、メディアのみならず一般人の間でも大きな失望感が広がっている。怒りと疑問のツイッターの中には、主演男優賞、女優賞、助演男優賞、女優賞の計20人が全員白人だったことを受け、「レゴの主役の顔は黄色だし、黒い顔もダメ。オスカーで認められるのは白い顔だけ」と白人至上主義を非難する声も多数上がっている。

ほかには、オスカー会員好みのクリント・イーストウッド監督(『アメリカン・スナイパー』)が監督賞で落選し、ダークホースのベネット・ミラー監督(『フォックスキャッチャー』)がノミネートされたこと。ジェニファー・アニストン(『Cake(原題)』)やエイミー・アダムス(『ビッグ・アイズ』)の代わりにオスカー女優のマリオン・コティヤール(『サンドラの週末』)が主演女優賞にノミネートされたことや、主演男優賞にジェイク・ギレンホール(『Nightcrawler(原題)』)やレイフ・ファインズ(『グランド・ブタペスト・ホテル』)ではなくブラッドリー・クーパー(『アメリカン・スナイパー』)が3年連続でノミネートされたことについて、実在の人物を演じたブラッドリーを好むオスカー会員の特徴を反映しているともいわれている。

また助演女優賞に、『ランブリング・ローズ』(91)以来2度目となるローラ・ダーン(『Wild(原題)』)が選ばれ、ジェシカ・チャステイン(『A MOST VIOLENT YEAR』)が選ばれなかったこともサプライズとなる一方で、19回目のノミネートを果たした助演女優賞のメリル・ストリープ(『イントゥ・ザ・ウッズ』)、84歳という最高齢で助演男優賞のノミネートを果たしたロバート・デュヴァル(『ジャッジ 裁かれる判事』)や、クリストファー・ノーラン監督作『インターステラー』(14)がメインのカテゴリーには選ばれず、視覚効果賞などにとどまったことは、「ベテラン好きのSF嫌い」の体質をそのまま引き継いでいるとみられている。

第87回アカデミー賞授賞式はニール・パトリック・ハリスの司会で、現地時間の2月22日にロサンゼルスのドルビー・シアターで開催される。【NY在住/JUNKO】

■第87回アカデミー賞主要部門ノミネート一覧

【作品賞】

「アメリカン・スナイパー」

「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」

「6才のボクが、大人になるまで。」

「グランド・ブダペスト・ホテル」

「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」

「Selma(原題)」

「博士と彼女のセオリー」

「セッション」

【監督賞】

アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」

リチャード・リンクレイター「6才のボクが、大人になるまで。」

ベネット・ミラー「フォックスキャッチャー」

ウェス・アンダーソン「グランド・ブダペスト・ホテル」

モルテン・ティルドゥム「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」

【主演男優賞】

スティーブ・カレル「フォックスキャッチャー」

ブラッドリー・クーパー「アメリカン・スナイパー」

ベネディクト・カンバーバッチ「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」

マイケル・キートン「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」

エディ・レッドメイン「博士と彼女のセオリー」

【主演女優賞】

マリオン・コティヤール「サンドラの週末」

フェリシティ・ジョーンズ「博士と彼女のセオリー」

ジュリアン・ムーア「アリスのままで」

ロザムンド・パイク「ゴーン・ガール」

リース・ウィザースプーン「Wild(原題)」

※続きは関連データへ

■第87回アカデミー賞主要部門ノミネート一覧(続き)

【助演男優賞】
ロバート・デュヴァル「ジャッジ 裁かれる判事」
イーサン・ホーク「6才のボクが、大人になるまで。」
エドワード・ノートン「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」
マーク・ラファロ「フォックスキャッチャー」
J・K・シモンズ「セッション」

【助演女優賞】
パトリシア・アークエット「6才のボクが、大人になるまで。」
ローラ・ダーン「Wild(原題)」
キーラ・ナイトレイ「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」
エマ・ストーン「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」
メリル・ストリープ「イントゥ・ザ・ウッズ」

【長編アニメーション賞】
「ベイマックス」
「The Boxtrolls(原題)」
「ヒックとドラゴン2(仮題)」
「Song of the Sea(原題)」
「かぐや姫の物語」
作品情報へ

関連記事