第68回カンヌ国際映画祭、前半を振り返る

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第68回カンヌ国際映画祭、前半を振り返る

始まるとあっという間に過ぎていく第68回カンヌ国際映画祭。はやくも折り返し地点を過ぎて、パルム・ドールのゆくえについての意見交換が盛り上がってきた。

前半までの上映作品の評判と傾向を報告すると、インターナショナル系ジャーナリストとそれ以外の主にフランス・ヨーロッパ系ジャーナリストで一番人気がはっきりと分かれている。

インターナショナル系の日報「SCREEN」誌ではトッド・ヘインズ監督の『CAROL』が4ポイント満点中平均3.5ポイントというまれに見る高評価。

次点はこれが処女作になるハンガリーのラズロ・ネメス監督の『SON OF SAUL』で2.8ポイント。フランス・ヨーロッパ系の日報「FILM FRANCE」ではナンニ・モレッティ監督の『MIA MADRE』が4ポイント満点中平均3.2ポイントを獲得、こちらでは『CAROL』は2.5ポイントと三番手につけている。

『SCREEN』でも『MIA MADRE』は2.7ポイントで三番手である。「FILM FRANCE」の次点はステファン・ブリゼ監督の『THE MEASURE OF A MAN』2.8ポイントで、『SON OF SAUL』2.3ポイントという結果になっている。

日報の星取りだけで、パルム争いは4本にしぼられた、というのは少々気が早すぎるだろうか。名前を上げた作品について、簡単にストーリを追っておこう。

●『CAROL』出演:ケイト・ブランシェット、ルーニー・マーラ

1952年のアメリカ。デパート勤務の女(ルーニー・マーラ)が裕福な主婦のキャロル(ケイト・ブランシェット)と知り合う。2人は、互いに今の人生と暮らしについて根深い不満と不安を持っていることを知り急速に親しくなっていき、シカゴまで2週間の女2人だけのドライブ旅行に出発する…。

●『MIA MADRE』出演:マルガリータ・ブイ、ジョン・タトゥーロ、ナンニ・モレッティ

女性映画監督マルガリータ・ブイは入院中の母に死期が迫っていることを知らされる。兄と2人で病院に通いながら、新作映画の撮影をするマルガリータ。アメリカからイタリア系の俳優ジョン・タトゥーロを招くのだが、プライドは高いのにセリフは忘れイタリア語は下手くそという“スター”に現場は混乱していく。別居中の夫と暮らす娘は、進路を迷う時期で母親を求めているのだが、マルガリータは一度にいくつもの難題を解決できるのだろうか?

●『SON OF SAUL』出演:レヴェンテ・モルナール

アウシュビッツ強制収容所でハンガリー兵の捕虜として雑役をするサウル。移送されてくるユダヤ人たちを「シャワー室」に連れて行き、その後始末をする毎日だ。ある日、シャワーの後で息のある少年を見つけたサウルだが、少年は医師の手で息の根を止められてしまう。サウルは焼却炉に送られる前に遺体を盗み出し、ユダヤ教の儀式で葬ろうとするのだが…。

●『THE MEASURE OF A MAN』出演:ヴァンサン・ランドン

妻と障がいのある息子と暮らす男(ヴァンサン・ランドン)は、年齢のせいもあり失業して何か月も仕事につけない。やっとの思いでありついた仕事はスーパーの警備員で、毎日万引きやクーポンをごまかすレジ係などを見張ることになる。生活の苦しさについ罪を犯す人々の姿に、彼は心をすり減らしていく…。

コンペの日本関係作品については、是枝裕和監督の『海街diary』は健闘、渡辺謙出演の『THE SEA OF TREES』は日報の星取りでいえば最低を争っているのだが、例年日報の星取りが低くてノーマークの作品が各賞を受賞することもしばしば。まだ気は抜けない。【シネマアナリスト/まつかわゆま】

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