役所広司、演じた阿南大臣の子息の評価に安堵の表情
『駆込み女と駆出し男』(公開中)の原田眞人監督が手掛けた反戦映画『日本のいちばん長い日』の初日舞台挨拶が、8月8日に丸の内ピカデリーで開催。役所広司、本木雅弘、松坂桃李、神野三鈴、原田眞人監督、本作に登場する鈴木貫太郎首相の遺族・鈴木道子が登壇した。役所は、鈴木首相が死の床で語った言葉を引用し「“永遠の平和”がこれからも100年200年と続くように祈りたいと思います」と力強く述べた。
原作は、半藤一利の傑作ノンフィクションで、太平洋戦争末期に、終戦の舞台裏で身を挺して闘った人々の物語が描かれる。役所は陸軍大臣・阿南惟幾を演じたが、舞台挨拶では、阿南大臣の実子・阿南惟正からの手紙も代読された。それには「役所広司さんが公私共にきっちりと演じてくれました」と感謝の内容と平和への熱い思いが綴られていた。
役所は「日本の未来を信じて戦争で戦った方々と、戦争に終止符を打つことに尽力をされた方々が、いまの日本を見て、満足してくださってるかどうかはわからないです。でも、阿南さんのご子息が、こうしてこの映画について、語ってくださったことに、個人的にはとても感謝しています。実在の人物を演じるのは怖いし、不安でいっぱいでしたが、今回は、合格点をもらったみたいでほっとしてます」と安堵の表情を見せた。
また、鈴木首相の孫である鈴木道子は、鈴木首相役の山崎努の演技について「名演技でやっていただいて感謝しています」と称え、亡き祖父についての秘話を明かした。「首相を引き受けた時、戦争を続行するつもりで受けたのかどうかという質問をよく受けます。当時、祖父は『バドリオになるぞ』と言っておりました。バドリオは、連合軍の首相で、その頃、売国奴とされていました。人には言えないことですが、最初から戦争をおさめるつもりで、お受けしたんだと思います」。
その言葉を受け、本木は「非常に貴重なお話。日清、日露を入れて、三度目の戦争を経て、胸のうちに勝利と共に感じた矛盾みたいなものがきっとあったのだと思います。辞世の言葉が『永遠の平和』だったということで、その言葉のなかにこれまで生きてきた思いを込められていたんじゃないかと思います」と感慨深い表情を見せた。
原田監督は「秘密保護法案が通ったあたりから、日本は変な方向へ行くなと思っていました。戦後70年は、かなり節目になることが多いと思います。基本的にはこの作品がひとつの契機となって、戦争を考えるってことが重要かなと」と本作への思いを語った。【取材・文/山崎伸子】