ロバート・パティンソン、「狂気の沙汰ほどの幸運を得た」キャリアと“今”を語る
伝説のスター俳優ジェームズ・ディーンと、写真家デニス・ストックとの運命的な出会いを綴る映画『ディーン、君がいた瞬間(とき)』(12月19日公開)。まだ世に名前が知られる前の若き二人のアーティストが、いかに刺激し合ったのかを哀愁と共に描き出すヒューマンドラマだ。“スターに上ろうとしている俳優と、それを追いかける写真家”という関係性が興味深いが、その野心溢れる写真家を大スターのロバート・パティンソンが演じている点も面白い。ロバートにインタビューし、ブレイクを果たした『トワイライト』シリーズ以降の役者道の歩み方を聞いた。
ロバートが演じたデニスは、「もっと世間を驚嘆させる写真を撮らなければ」と焦る写真家だ。その野心を叶えてくれる存在だと感じたのがジェームズ・ディーンで、彼に密着撮影を持ちかけることから物語は動き始める。劇中でデニスは焦りと怒り、苦悶の表情を見せるが、ロバートは「とても悲観的で、イラっとするほど不安に支配されている人物」だと役柄を分析する。
「デニスは、常に全てがうまくいっていないと心配している。アーティストを目指し、描いているアーティスト像に自分で思っているほど近づけていないのではないかと恐れている。それこそが、彼の人生に影を落としている要因なんだ」
思い描くアーティスト像に近づけず、自分が何者かを証明できないでいる不安。『トワイライト』シリーズで若くして大スターとなったロバートにとって、その苦悶は共感できるものだったろうか?「僕にも苦悶した経験がある。よほどラッキーな人でない限り、みんなある程度、共感できるところがあると思う。みんななかなか自信が持てないし、特にクリエイティブな仕事をしている人はそういうふうに思うんじゃないかな。色々試してみて何が得意で、何が不得意かを見つけていって、最終的にある程度自信が持てるようになっていくんじゃないかと思うんだ」
デニスはジェームズとの出会いが刺激となり、大きく運命を変えていくこととなる。「『エデンの東』を観たデニスは、『この男はすごい』とジミーから刺激を受ける。間近に自分の能力を最大限に発揮している人を見るというのはすごいことだ。ジミーのそばにいることで、デニスも徐々に自分を少し信じられるようになったんだと思うよ」
また、ロバートにとって運命を変えてくれたような出会いについて聞いてみると、「僕の人生は、大きく運命を変える出会いばかりだよ」とにっこり。「例えば、最初のエージェントを見つけるところからものすごく大きな転機になっていったわけで、俳優としてこういう人生になるとは全然想像できなかったんだ。突然大きなチャンスを与えられるとはね。本当に狂気の沙汰ほどの幸運を得たと思っているんだ」
ジェームズ・ディーン役を演じたデイン・デハーンとの共演も、素晴らしい出会いとなったようだ。「すごくいいやつだったよ。彼は仕事をすごく真剣にとらえる人で、ジェームズ・ディーンを演じるということは、どんな役者にとってもものすごく大変なことだったと思う。彼と僕とでは俳優として違うアプローチをとっているけれど、彼のことはすごく大好きだし、すごく面白いやつだった」
さらに絆を育んだエピソードを聞いてみると、「とりあえず覚えているのは、撮影場所がものすごく寒くて。それで仲良くなったといってもいいかもしれないな(笑)。だって、クルーは南極隊みたいに着込んだ格好なのに、僕たちはスーツ1枚とかで毎日撮影をこなしていたんだよ!それで絆が深まったんじゃないかな」と楽しそうに振り返っていた。
「狂気の沙汰ほどの幸運を得た」というキャリアのスタートから、「何が得意で、何が不得意かを見つける」時期にいるという現在。「自分でこういうキャリアを築いていこうと思って選択するんじゃなくて、オファーがきたものをやるといった感じかな。だからすごく好きだなと思える役は1年に1つか、2つくらいしかないんだ。でも、以前演じた役と反対の役柄をやろうと心掛けているよ」と役者道の歩み方を明かす。何かをつかもうともがくデニスと、ロバートの姿が重なる。イメージにとらわれず、殻を破ることを恐れない。ロバート・パティンソンのこれからが、ますます楽しみになった。【取材・文/成田おり枝】