成海璃子、初の官能シーンに挑戦。池松壮亮が「素敵だった」という理由とは?
成海璃子が、小池真理子の半自伝的小説を映画化した『無伴奏』(3月26日公開)で初めての官能シーンに挑んだ。相手役となるのは、若手実力派の筆頭・池松壮亮。自分を追い込むように没頭した本作の撮影は、「過酷だったことは間違いない」と成海。一方の池松は、「本当に素敵だった」と彼女の挑戦に賛辞の言葉を惜しまない。二人を直撃し、濃厚な撮影を振り返ってもらった。
学園紛争が起きていた1970年前後を舞台に、多感な恋に揺れ動く男女の姿を描く本作。成海は主人公の高校生・響子に扮し、少女が大人の女性へと成長していく姿をみずみずしく演じきった。成海は「台本を読んだときに、すぐには判断できなくて。矢崎(仁司)監督とお会いしました」と述懐。「矢崎監督は私を見るなり、『響子だ』っておっしゃるんです。そんなにいっていただけるならと、『やります』とお返事しました。監督はとても純粋で素敵な方です」と、矢崎監督の熱意と人柄が背中を押してくれたという。
響子の成長を演じる上では、初めてのキス、セックスと大胆な官能シーンが必然となる。そのことに躊躇はなかっただろうか?すると「本格的なラブストーリーは初めてだったのですが、恋愛を描く上でそういうシーンがあることも自然なことだと思うので特にありませんでした。共演者、監督への信頼もありました。」と女優魂を見せつける。
響子が身を焦がすような恋に落ちる渉役を演じるのが、池松だ。成海とは初共演となるが、これまでの成海の作品はよく観ていたという。「なかなか見たことがない脚本だったし、成海さんがこういう作品で真ん中に立つというのは、すごく面白いと思いました。よくあるキャスティングではないので、座組に惹かれた部分が大きいです」と成海の新たな一面を引き出そうとする本作に、大いに興味を持ったそう。
成海は「私は俳優で、やると決めたことはやるしかない」と腹をくくったものの、「いっぱいいっぱいでした。自分の中で過酷だったことは間違いないです」としんどい部分も多かった。そんな中、池松の存在が「すごく頼りになった」と笑みをこぼす。「一緒にいる時間が多かったのが池松くんで、たくさん話もしたし、色々な面で助けてもらいました。私は官能的なシーンもやったことがないし、私だからこんなに時間がかかってしまうのかと落ち込んでしまうときもあって。池松くんには『大丈夫だよ』といってもらってすごく助かりました」
ひたむきに役に向き合う成海を、池松はこう見つめていた。「女優としても人としても本当に素敵でした。ひとつも諦めない姿が、役に通ずる部分があって。それに、過酷にしているのは自分ですからね。それが本当にかっこいいんです。楽にやろうと思えば簡単ですから。それだけちゃんと自分のやることに責任を持とうとしている時点で、色々な思いが沸き起こってくる。そういう成海さんの姿を見ていたからこそ僕も助けられたし、一つの作品をつくるという上でとてもよかったと思います」
池松といえば、映画で濡れ場を見せることも多く、今回は斎藤工を相手に男性同士の官能シーンにもトライしている。「濡れ場の心構えとして、成海さんにアドバイスすることはあったか?」と質問を投げかけてみると、「そんなことしたら気持ち悪いでしょう」と二人で大笑い。くったくなく笑い合う姿からも固い絆を結んだことが伝わってくるが、池松は「濡れ場や肌が触れ合うとなると、信頼関係がないとうまくいかない。それが映像に映ってしまいますから。今回はいい人ばかりが集まっていたので、すごくよかったと思います」とやはり信頼関係なくしては、心を打つ濡れ場を作るのは難しいという。
新境地を切りひらき、成海は「ものすごくたくさんの感情が出てきて、俳優という仕事についても色々考えました。これだけ色々なことを考えられたというのは、それだけ集中して没頭していたからだと思って。そんな現場に出会えてよかったなと思っています」と清々しい表情を見せる。
また、傷つきながらも渉との愛を貫こうとする響子については「人を愛することって、生きる上で素晴らしいことだし、すごいパワーだと思いました。今の私には傷ついてでも進むという熱量はなかなか持てない。いつかそう思えるだけの相手が現れたら素晴らしいですね」と23歳らしい恋愛観を吐露。池松も「僕もそれならば一人で生きていくと思っちゃうんですよね。まだまだ若いですから、これから頑張ります」とこちらも恋愛より仕事モードの様子だ。成海璃子の新境地と、胸が痛むほどの愛をぜひスクリーンで目撃してほしい。【取材・文/成田おり枝】
ヘアメイク:草場妙子
スタイリスト:清水奈緒美
■池松壮亮
ヘアメイク:宮田靖士(VaSO)
スタイリスト:纐纈春樹