ジブリ、是枝裕和、浅野忠信…今年のカンヌ「ある視点部門」がアツい!
5月11日(水)から22日(日)まで開催される第69回カンヌ国際映画祭。本年度は日本が関わっている作品が3本、いずれも「ある視点部門」に出品されることで話題だ。カンヌ開幕に先がけ、今回はその3本の注目作を紹介したい。
まずは是枝裕和監督の最新作『海よりもまだ深く』(5月21日公開)。阿部寛を主演に迎え “なりたかった大人”になれなかった大人たちを描く人間ドラマで、是枝監督がこれまで撮り続けてきた完璧ではない家族のあり方をテーマにした物語だ。是枝監督の本映画祭への出品は、『誰も知らない』(04)、『海街diary』(15)などに続き通算6度目。『そして父になる』(13)では審査員賞を受賞するなど、カンヌとの愛称は抜群だ。是枝監督の作家性が円熟の期を迎えた本作も受賞が大いに期待できる。
続いて、下町で金属加工業を営む夫婦と彼らのもとに突然現れた男との奇妙な共同生活を描いた『淵に立つ』(秋公開)。家族に“異物”が混入することでそれぞれが抱える秘密があぶり出されていく本作。深田晃司監督は「10年近く温めていた企画で、無事完成しただけでも幸運なのに、最高の形で世界に届けられることを嬉しく思います」と作品が選出された喜びをコメントしている。また、昨年度の同部門監督賞を受賞した『岸辺の旅』(15)に続き、本作でも主演を務めた浅野忠信の評価も気になるところだ。
最後は、アカデミー賞短編アニメーション賞を受賞したことがあるマイケル・デュドク・ドゥ・ビット監督の『レッドタートル ある島の物語』(9月17日公開)。日本のスタジオジブリが初めて海外作家をプロデュースした注目のアニメーションだ。ビット監督は一時期、東京・小金井に転居し、本作でアーティスティック・プロデューサーを務める高畑勲のチェックを受けながら作業していた経験があるという。スタジオジブリの鈴木敏夫は「友人でもあるマイケルさんの最新作が名誉あるカンヌ映画祭でお披露目できることは、一緒に携わってきた僕にとっても嬉しいことです」と語っている。
名前はよく耳にするが、あまり広く知られていないこの「ある視点部門」。パルム・ドール(最高賞)を争うコンペティション部門とは別に、「独自で特異な」作品に的を絞り、毎年約20本の作品が選出される、カンヌの各部門でも特に革新性を重視した部門だ。エントリーしている上記3作品が旋風を巻き起こすことができるのか?その動向に注目してみてほしい。【トライワークス】