『ゴーストバスターズ』レビュー「メリッサ・マッカーシー、日本でナメられ過ぎ!」問題
8月19日に全国公開を迎えた『ゴーストバスターズ』。米国ではオリジナル版のファンから「女を主人公にするな!」という時代錯誤も甚だしい批判の声が上がったが、日本の観客は本作をどのように受け取ったのか?主人公たちが男だろうと女だろうと面白いものは面白い。だが、心配なのは日本での米コメディ俳優の人気が本国での人気とかい離している状況。特に、新バスターズの一因としてその核をなしているメリッサ・マッカーシーが受け入れられるのか、反応が気になってしまう。
アメリカン・コメディのファンは別として、日本では「誰、それ?」という反応が大半だ。メリッサは本国では圧倒的な支持を受けるコメディ女優。『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』(11)で第84回アカデミー賞助演女優賞にノミネートされて以来、米国で快進撃を続けており、サンドラ・ブロックと共演した『デンジャラス・バディ』(13)をはじめ、全米大ヒット作を次々と放っている。『ヴィンセントが教えてくれたこと』(14)では、“オリジナル・バスターズ”のビル・マーレーを支える好助演で、演技派の片鱗をうかがわせた。
が、悲しいかな『泥棒は幸せのはじまり』(13)『SPY/スパイ』(15)は全米1億ドル超えの大ヒットを記録したにもかかわらず、日本では劇場未公開のソフトスルー。これまでにはソフトにさえなっていない主演作もあるのが実情だ。アメリカン・ジョークを理解できない日本の観客にとって、米国のコメディ俳優は受け入れられにくく、必然的に冷遇される…という状況は昔からあったが、それにしてもメリッサの人気は本国に比べて温度差があり過ぎる。アメリカン・ジョークに頼るだけではない面白い個性を、彼女は持っているのだから、もっと脚光を浴びてもいいはずだ。
メリッサの武器は、まずお世辞にもスマートとは言えない巨体にある。日本のタレントにはオデブちゃんには愛されキャラが多いが、そういう状況に彼女の存在はマッチしているのかもしれない。それ以上に大きな武器は、押しが強く、物おじせず、ズケズケと言いたいことを言うキャラクターを得意としていることだ。たとえれば、さながらマツコ・デラックス。言いっぱなしではなく、フォローするべきところはフォローする、さりげない気配りキャラであることもマツコとリンクする。
そんなメリッサの個性は、『ブライズメイズ~』の盟友ポール・フェイグと4度目のタッグを組んだ『ゴーストバスターズ』でも活きている。彼女がふんするのは、幽霊退治チームの一員である幽霊オタクの理系女子。巨体を揺らしての必死のアクションはもちろん、テレビのオカルト番組を見ながら「こういうインチキ番組のせいで、私たちは世間に評価してもらえないんだよ!」と毒づいたり、苦労して撮影したゴースト映像をネットに上げたら中傷され「いつでもどこでも相手してやるから来やがれ!」とブチ切れたり。それでいて、仲間思いの姉御肌だったりする。
まさに真骨頂というべきキャラクターを時に体を張り、時に絶妙のツッコミを入れて妙演するのだから、目を引き寄せられること必至。「日本でナメられ過ぎ」なメリッサが日本での知名度を上げるのは間違いない!【文/相馬学】