細田守、監督人生の分岐点を語る!『ハウル』失敗からの再生|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
細田守、監督人生の分岐点を語る!『ハウル』失敗からの再生

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細田守、監督人生の分岐点を語る!『ハウル』失敗からの再生

現在行われている第29回東京国際映画祭では、アニメーション特集「映画監督 細田守の世界」に合わせて全7回のトークイベントを開催中。家族、キャリアの原点、海外からの評価など、本人の口から語られてきたが、第5回では監督人生の分岐点となった“あの話”を聞くことができた。

この回でフォーカスする作品は、細田監督が脚光を浴びるきっかけになった『時をかける少女』。10日29日、TOHOシネマズ六本木ヒルズで行われた氷川竜介(アニメ・特撮研究家)との対談から、印象的な細田の発言を紹介したい。

『時をかける少女』のトークイベントに登壇した細田守監督
『時をかける少女』のトークイベントに登壇した細田守監督

「『ハウルの動く城』での失敗がストレートに焼き付いている」

東映動画(現・東映アニメーション)に入社し、順調にキャリアを重ねていた細田は、スタジオジブリ作品『ハウルの動く城』の監督という大役を任される。しかし、結論から言えば細田は監督を降板、宮崎駿が監督を引き継いで完成し、04年の公開を迎えた。細田守ヒストリーとして有名なエピソードだが、『時をかける少女』にはこの時の経験が持ち込まれているという。

「原作では主人公の意思と関係なくタイムリープするんですけど、この映画では主人公が選択できるようにしました。なぜそうしたかというと、製作当時の自分自身が、人生の選択肢で失敗したんじゃないかと悩んでいたからです。『ハウルの動く城』がいろんな理由で監督できなくなって、完全に失敗した。あれが勝負の分かれ目だったと思うし、何年もずっと後悔していました」。

「『時をかける少女』には当時の思いがストレートに焼き付いていると思います。もっと何かしておけば、もっと何か言っておけば、『ハウルの動く城』がちゃんと完成したんじゃないか、と考え続けていたんですけど、考えても時間が戻るわけじゃない。でも、その後の人生に価値はないのか?というと、そうじゃない。『時をかける少女』に『前を見ろ』というセリフがあります。それでも前を見つめることが大事なんじゃないか、と。かなり実感を伴っているセリフだったと思います」。

公開から10年を迎えた『時をかける少女』
公開から10年を迎えた『時をかける少女』[c]「時をかける少女」製作委員会2006

「『時をかける少女』は“後悔の映画”だと気づいてハッとした」

いまや海外映画祭に招待されることも珍しくなくなった細田監督だが、その流れは『時をかける少女』から。この作品で海外を回ったときに、細田監督は自分でも思いもよらない“気づき”があったという。

「釜山国際映画祭を皮切りに、海外のいろんな映画祭に呼ばれました。『時をかける少女』で描く“日本の高校生”という実感は日本以外では得られないかもしれないと思っていたけど、海外のお客さんは『人生における後悔の映画だ』と解釈して、楽しんでくれた。高校生をイキイキと描きたいというぐらいで、自分でも何を作ったかわかっていなかったんですけど、そこでハッとしました。気づくことができて、嬉しかったですね」。

【写真を見る】『ハウルの動く城』の失敗が「勝負の分かれ目だった」と振り返る
【写真を見る】『ハウルの動く城』の失敗が「勝負の分かれ目だった」と振り返る

「人間関係のなかで主人公が変化していくところが見たい」

細田監督の描く主人公は必ず、家族、仲間、異性との関係性のなかで少しずつ変わっていく。映画の最初と最後では、主人公から受ける印象が違って見えるはずだ。細田監督は、自分でもこの主人公の変化を楽しみながら作品を作っているという。

「僕自身、主人公が変化していくところが見たいんです。自分を変えたいという気持ちはみんなあると思うけど、なかなか変われないじゃないですか。何が起きたら変われるのか、もうちょっとマシな生き方ができるのか…。僕は、映画の中で主人公が重要な人と出会い、人との関係のなかで主人公が変わっていく、そのダイナミズム、バイタリティを表現したいと思っています。それはどの作品にも共通しているんじゃないかな」。

「『時をかける少女』には当時の思いがストレートに焼き付いている」と語った
「『時をかける少女』には当時の思いがストレートに焼き付いている」と語った

回を重ねるごとに赤裸々な思いを言葉にしていく細田監督。この特集上映とトークイベントをきっかけに、細田監督自身、何か新たな気づきを得ようとしているのかもしれない。

次回はアニメーション監督・堤大介とのスペシャル対談。細田作品をきっかけにトークを展開していたこれまでとは違い、少し番外編的な位置づけだが、クリエイター同士の技術論や作品への取り組み方などで興味深い話が聞けそうだ。【取材・文/トライワークス】

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