オダギリ ジョー
早川猛
オダギリジョー主演による緊迫感みなぎる人間ドラマ。ある事件をきっかけに激しく揺れ動いていく兄弟の絆を、「蛇イチゴ」の西川美和監督が繊細に映し出す。
※結末の記載を含むものもあります。
写真家として活躍する猛の兄で温厚な稔が、幼なじみの女性をつり橋から突き落とした容疑で逮捕された。やがて裁判が始まり、稔の意外な一面をかいま見た猛は、法廷で思いもよらないことを証言するのだった。
早川猛
早川稔
早川勇
岡島洋平
川端智恵子
丸尾明人監察官
船木警部補
裁判官
早川修
原案、脚本、監督
製作
製作
製作
企画
企画
プロデューサー
撮影
照明
録音
美術
音楽
編集
キャスティング
助監督
製作担当
衣裳
ヘアメイク
スチール
製作委員
[c]2006「ゆれる」製作委員会 [c]キネマ旬報社
「藪の中」という芥川龍之介の短編小説がある。ある殺人事件の真相について、7人の証言者が語るのだが、それぞれが食い違った告白をするために、真実が藪の中になってしまう物語だ。
映画「ゆれる」も、観終わった後に何か釈然としない思いが残った。兄弟と、幼なじみの女性・川端智恵子(真木よう子)が渓谷に遊びに行く。弟・早川猛(オダギリジョー)は吊り橋を渡った後に、近くで写真を撮っていた。幼なじみの女性が彼を追い、高所恐怖症の兄・早川稔(香川照之)も彼女の後をついていく。その後に吊り橋の上で二人の間にいざこざがあり、女性は橋から転落してしまう。
最初は事故で処理されたが、勤め先で傷害事件を起こした稔が、警察署内で吊り橋での他殺を告白して状況が一変する。しかし、稔は法廷では自白を翻して無罪を主張し、弟も潔白を信じて兄と一緒に戦おうとする。
二人の間に変化が起こるのは、拘置所での面会だった。カメラマンとして成功した弟に、自分の不遇を語り、押さえ込んでいた感情を曝け出す兄。「自分が人殺しの弟になるのが嫌なだけだよ」と挑発する兄に、猛も反発してしまい、法廷で兄に不利な証言をしてしまう。
猛は本当に吊り橋での他殺を目撃したのか? ただの反発で、兄を刑務所に入れることができるのか? 様々な「ゆれる」思いが、観客を混乱に陥れる映画なのだ。
借りたDVDの音質が非常に悪く、兄と弟のやり取りが聞き取りにくいシーンが何箇所かあった。映画の評価がはっきりしないのは、そのためもあるが、日本語字幕がなかったのは残念だった。
ミステリーとして、最後まで目がはなせない流れではあります。
他には、兄の不気味顔と、弟の捨て犬顔のギャップ。
だけ。
心に響くとか、驚きとか、私には皆無でした。かといってシュールさがあるわけでもなく。
親兄弟の醜いケンカとか、押さえつけた真面目人間の暴走とか、裏切りとか、女性がらみの陰気なもつれとか、人間にはそういうとこもありますよね~。。で?どうしたいん?
色んな人が高く評価してるから、期待しすぎたのかな。。
村上春樹がバカ売れする現象と似た、私には理解不能のマジョリティ・ワールドです。
映画館で鳥肌が立つような心境になった作品。
わずか1ヶ月間で撮りきった映画とのこと。
“みんないい人”“兄弟は結局真心で通じ合える”そんな安易なテーマではありません。
親密であるが故の嫉妬や憎悪。暗さから目を背けない、文字通り『ゆれる』映画。
西川監督からはサブテキストとして、太宰治の『駈込み訴え』が主演の二人に渡されたそうです。
ご存知の方は「あぁ、なるほど」と合点がゆくでしょう。(私は青空文庫で読み直しました^^)
ユダの裏切りがユダの独白を通して語られるこの小説。
冒頭から堰を切ったように一気にたたみかけられる言葉は、愛情・憧れ・嫉妬・卑屈・怒り・憎悪など、複雑な感情の吐露。圧倒的にグイグイと読者に迫ってきます。
太宰が原稿用紙に書いたのではなく、夫人が口述筆記したと言われているエピソードからも、『ゆれる』と同様、一気に作り終えた作品という共通点が見えますね。
この映画の撮影後、亡くなられたカメラマン高瀬比呂志氏。合掌。