夏八木勲
小野泰彦
『冷たい熱帯魚』や『恋の罪』といった、実在の事件などを題材にしたショッキングな作品を次から次へと送り出す鬼才・園子温監督。そんな監督が東日本大震災以降の日本の人々の暮らしを見つめた社会派エンタテインメント。原子力発電所近辺で暮らす2組の家族の姿を通し、改めて現在、日本が直面している危機について訴える。
※結末の記載を含むものもあります。
東日本大震災から数年経った20XX年。長島県で暮らす酪農家の小野家と農家の鈴木家はつつましく幸せに暮らしていた。ところが新たな大震災が発生し、大津波が人々や原子力発電所を飲み込む。鈴木家は避難指示で家を出なければならなくなるが、小野家は避難区域外に。それぞれの家庭が不安に苛まれる中、小野家の息子の妻の妊娠が発覚する。
小野泰彦
小野智恵子
小野洋一
小野いずみ
鈴木ミツル
ヨーコ
志村(町役場職員)
加藤(町役場職員)
産婦人科医
松崎
田中(警官)
寺山(警官)
島田(避難する住民)
橋本(避難する住民)
ガソリンスタンドの店員
水島(避難所の人)
谷川(避難所の人)
トークイベントのゲスト
TVの中の司会者
三島(洋一の同僚)
荒井(洋一の同僚)
林(洋一の同僚)
ひろみ(妊婦)
検問所の警官
TVの中の官僚
海辺の父親
鈴木めい子
鈴木健
脚本、監督
撮影
照明
美術
装飾
録音
整音
編集
助監督
製作担当
VFXディレクター
スクリプター
キャスティング
小道具
衣裳
衣裳
ヘアメイク
プロデューサー
プロデューサー
プロデューサー
ラインプロデューサー
共同プロデューサー
共同プロデューサー
[c]2012 The Land of Hope Film Partners [c]キネマ旬報社
のっけから「長島県」という表現が出て来て、ああ、福島とは違うんだと思わせるところがミソ。実はこの物語の設定は、日本の近未来にあって、福島を体験しながらその経験を生かせない、現在の日本を皮肉ったもの。原発のあるところなら、どこでも起こりうる問題です。 福島と同じ問題が起きたものだから、福島ではどうだったのか、と経験者に聞く、ここにこの物語の鍵があります。こうやって、ドキュメンタリーとドラマを結びつけたということが分かります。優れた技法です。 単に福島のときをそのまま再現しても、それはそれで、良かったとは思いますが、あなたの町でも起こりうることですよ、という監督のメッセージが伝わります。 今回の民主党の政権交代は、「3.11」の対応のマズサもあったとは思いますが、政権内部では首都圏3,000万人を避難させる案もあったと聞きます。本当にそうした方が良かったのでしょうか。全く分かりません。とにかく首都圏3,000万人が背負った大きな宿痾(しゅくあ)と共に、我々は今後生きていかなければならないのです。
3.11を題材にした園監督が脚本も手掛けた力作。 被災者の目線の側から撮られた作品。 だから、ニュースなどで情報は見知ったものが多いかもしれない。 そんな中で親子が被災することで別れ別れになる場面などは、 身を切られるような思いになる人は多いかもしれない。 劇場のそこかしこで鼻を啜る音がしていました。 自分も涙した者の一人です。 とはいえ、何て言えばいいんでしょうか。 直球すぎる。 これが自分の良くも悪くもを含んだ全体の感想です。 別件ですが、被災地への思いを語っていた、 お笑いのサンドウィッチマンの背の高い方が言っている 内容を思い出しました。 その内容は、こうだ。 震災に対して「自然災害でなく人災だ」と 騒ぎながら夢中で怒ってしまうと、聞いている人は 引いてしまい思いが届かない、と彼は言う。 話す立場の人は、聞いている人間の気持ちなど お構いなしに熱く語ってしまう傾向が強い。 その気持ちとは裏腹に、熱くなればなるほど、 どんどん聞く人間の方は引いていってしまうことが多い。 ということを言ってました。 自分が伝えたいという思いが当事者の立場が強すぎて 聞いている人の思いまで考える余裕がないと 相手の怒りばかりが伝わってきて、 本来伝える内容が伝わり辛くなってしまう。 この映画も同じように、 当事者感情が強すぎて見ていて共感はするものの、 全編この感じなので当事者の立場が近すぎて 少々息苦しく途中で気持ちが引いてしまいました。 とはいえ、「愛のむきだし」「冷たい熱帯魚」「恋の罪」「ヒミズ」 と度肝を抜く作品ばかりで大好きな監督ではあるので、 また映画の内容を忘れた頃にもう一度見直してみたい、 と心から思いました。