批評家が選ぶ、ライアン・ゴズリング出演作ランキング!『ラ・ラ・ランド』など“フレッシュ”10選
もっとも高い評価を獲得した2作品も、まるで対照的な作品というのはいかにもゴズリングらしい。デンマークの鬼才ニコラス・ウィンディング・レフン監督が初めてアメリカでメガホンをとったバイオレンス映画『ドライヴ』でゴズリングが演じたのは、卓越したドライビングテクニックを持ち、昼はカースタントを、夜は強盗の運転手をする男。常に安定した評価を得てきたゴズリングだが、本作がカンヌ国際映画祭で大絶賛を獲得したことが昨今のブレイクにつながったことは言うまでもないだろう。
また同じく92%フレッシュを獲得したのは、『アイアンマン3』(13)などを手掛けたショーン・ブラック監督がメガホンをとり、アカデミー賞俳優ラッセル・クロウと共演したクライムコメディ『ナイスガイズ!』。同作でゴズリングが演じたのは、クロウ演じる示談屋の男に無理やり連れられて人探しをする羽目になった私立探偵。70年代のロサンゼルスの空気感とノワール映画を彷彿とさせるストーリーに、演技派俳優2人のコミカルな掛け合いが見事に映える一本だ。
前述の『ドライヴ』しかり、ゴズリングの演技の持ち味は“二面性”のある役柄で発揮されると思える。キャリア初期を振り返れば、大人を翻弄する天才高校生を演じた『完全犯罪クラブ』(02)や、衝動的に恋人の弟を殺してしまった青年を演じた『16歳の合衆国』(03)など、極めてミステリアスな役柄が光る。そして90%フレッシュを獲得した『ハーフネルソン』で、ドラッグ中毒から立ち直ろうとする中学教師を演じアカデミー賞主演男優賞に初めてノミネート。“二面性”を高いドラマ性に落とし込むという見事な方向転換によって、俳優としての次のステップに進むことに成功したのである。
上位10作品のなかで特に愛すべき作品は、あるカップルの出会いから別れまでを繊細な映像表現で綴ったデレク・シアンフランス監督の『ブルー・バレンタイン』と、リアルドールに恋をするシャイな青年を演じた『ラースと、その彼女』。激情的な前者と素朴な雰囲気漂う後者と対照的ではあるが、近年ではすっかりクールな役柄が多くなったことを考えると、こうした人間味あふれる演技はどちらもよく似合っていると思える。ゴズリングはこの2作共にゴールデン・グローブ賞の候補にあがっており、80%超えの高評価はゴズリングの演技があってこそと言えるのではないだろうか。
『オデッセイ』(16)の原作者アンディ・ウィアーの新作SF小説「Project Hail Mary」の映画化企画で主演&製作を務める可能性があると報じられたゴズリング。ほかにも往年のモンスター映画をリブートする“ダーク・ユニバース”の最新作で『狼男』を演じることも明らかになっている。1941年の映画版をオリジナルにした同作は、名家の後継者が狼に噛まれたことで、満月の夜に狼男に変身するという物語だ。またしてもゴズリングの得意とする“二面性”のある演技が堪能できることだろう。
文/久保田 和馬