『君の名前で僕を呼んで』『マッドマックス』など全55作品の舞台をまとめ読み!本で旅する映画の世界

コラム

『君の名前で僕を呼んで』『マッドマックス』など全55作品の舞台をまとめ読み!本で旅する映画の世界

ノスタルジー漂う往年の名作からいまをときめく話題の新作まで、全55作品におよぶ映画の撮影地や舞台となった風景を収録した書籍「世界 夢の映画旅行」。ページをめくるたびに映画の世界に足を踏み入れた気分にさせてくれる、ファンにはたまらない代物だ。

映画ファン必見の書籍「世界 夢の映画旅行」
映画ファン必見の書籍「世界 夢の映画旅行」

掲載されている作品には、『ローマの休日』(53)や『ティファニーで朝食を』(61)、『ニュー・シネマ・パラダイス』(89)などの名作がズラリ。このほか、『ハリー・ポッターと賢者の石』(01)に『ロード・オブ・ザ・リング』(01)、『アバター』(09)、『(500)日のサマー』(09)、さらに『バーフバリ 伝説誕生』(15)までそろい、ファンタジーやSF、ドラマなどバラエティあふれるラインアップとなっている。各ページには、映画のストーリーや名場面、観光スポットまでもが記載。観たことのある作品からも、そうでない作品からも、新たな発見を与えてくれるこの書籍から印象的なページをピックアップしたい。

『アバウト・タイム 愛おしい時間について』のイギリス南西部のコーンウォール地方
『アバウト・タイム 愛おしい時間について』のイギリス南西部のコーンウォール地方

最初に紹介するのは、「スター・ウォーズ」続三部作でのハックス将軍役で知られるドーナル・グリーソン主演作『アバウト・タイム 愛おしい時間について』(13)。ある日、父親から家系的にタイムトラベルの能力が備わっていることを告げられたティム(グリーソン)は、その能力を恋愛のために使おうとする。意中の女性との関係を発展させようと奮闘するなかで、彼は本当の愛や幸せについて知っていく。
主人公の出身地であり、家族との温かな光景が印象的なイギリス南西部のコーンウォール地方。ヴァカンスを過ごす土地として人気で、「英国版モン・サン=ミッシェル」と呼ばれる孤島「セント・マイケルズ・マウント」などケルト文化が息づいている。

『ミッドナイト・イン・パリ』ではパリの街並みを魅力たっぷりに描かれた
『ミッドナイト・イン・パリ』ではパリの街並みを魅力たっぷりに描かれた

お次は、ウディ・アレン監督が、音楽や文学、絵画など文化的な魅力あふれるパリの街並みを描いた『ミッドナイト・イン・パリ』(11)。小説家を目指して悪戦苦闘中の映画脚本家のギル(オーウェン・ウィルソン)は、妻や裕福な彼女の両親とともに憧れのパリを訪れる。滞在中のある夜、酒に酔いながら街をうろついていた彼は、なぜか1920年代のパリへタイムスリップし、尊敬するF・スコット・フィッツジェラルドをはじめ、アーネスト・ヘミングウェイやパブロ・ピカソといった超有名な芸術家たちと交流する。
パリの街灯や華やかなバー、美術館などが次々と登場する本作。100年以上前のアンティーク遊具に囲まれたアールフォラン美術館の館内では、映画のようなタイムスリップ気分が味わえる。

『君の名前で僕を呼んで』など全55作品の撮影地やモデルとなった場所が一冊に
『君の名前で僕を呼んで』など全55作品の撮影地やモデルとなった場所が一冊に

ティモシー・シャラメが年上の男性に恋心を抱く少年を瑞々しく演じ、米アカデミー賞主演男優賞にもノミネートされた『君の名前で僕を呼んで』(17)も紹介したい。17歳のエリオ(シャラメ)は、アメリカの名門大学で教鞭を執る教授の父と何か国語も流暢に話す母を持ち、毎年夏になると北イタリアの別荘で休暇を過ごしていた。このシーズンになると父は博士課程の学生をアシスタントとして招待しており、1983年のこの年は自信と知性に満ちたオリヴァー(アーミー・ハマー)がやって来る。そんな彼をエリオは苦手に感じていたが、しだいに抑えることのできない感情が芽生え始める。
物語の舞台となる避暑地クレマを拠点に、シルミオーネやベルガモなど北イタリアの美しい街々や豊かな自然が登場。シルミオーネは、エリオと彼の父オリヴァーが課外授業で訪れる海辺のシーンに使われている。

『グランド・ブダペスト・ホテル』より、チェコの温泉街とドイツの田舎町
『グランド・ブダペスト・ホテル』より、チェコの温泉街とドイツの田舎町

ウェス・アンダーソン監督の特徴が存分に詰まった『グランド・ブダペスト・ホテル』(13)も収録されている。ヨーロッパにある架空の都市、旧ズブロフカ共和国で栄華を誇った名門「グランド・ブダベスト・ホテル」を舞台に、コンシェルジュとベルボーイがホテルの威信をかけて、得意客を殺した犯人捜しに挑む姿が描かれる。
ミニチュアのおもちゃのような美術やシンメトリーの画面など、こだわり抜かれた世界観に驚愕する本作。映画を象徴するキュートなホテルのモデルの一つになったのが、チェコの温泉街であるカルロヴィ・ヴァリに実在する高級ホテル「グランドホテル・バップ」だ。ただし、実際の撮影はドイツにある、ポーランドとの国境に位置する小さな田舎町ゲルリッツを中心におこなわれたという。中世の雰囲気が残るおとぎ話のような街並みが広がる。

【写真を見る】『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の撮影がおこなわれた広大なナミブ砂漠
【写真を見る】『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の撮影がおこなわれた広大なナミブ砂漠

最後に紹介するのは、終末的な世界で壮絶なサバイバルが繰り広げられる『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(15)。舞台は、資源が枯渇し、法も秩序も崩壊した世界。愛する者も生きる希望も失い、荒野をさまようマックス(トム・ハーディ)は、砂漠を支配する凶悪なイモータン・ジョー(ヒュー・キース=バーン)の一団に捕らわれ、瀕死の重傷を負ってしまう。そんな彼の前に現れたのは、ジョー配下の女リーダーのフュリオサ(シャーリーズ・セロン)だった。
広大な荒野で、様々な改造が施された車が何台も登場し、ド派手なカーチェイスが繰り広げられるなど、大勢の映画ファンの心を掴んだ。撮影は、アフリカ大陸の南にある世界で一番古い砂漠で、50000平方キロメートルの広さを持つナミブ砂漠でおこなわれた。夕暮れ時になると、砂丘がアプリコット色に染まり、息を呑むほど美しい光景を見ることができる。

初版本が発売されるとあっという間に売り切れてしまった「世界 夢の映画旅行」。早くも今月重版されることが決まったので、興味のある人はぜひ手に取ってみてほしい。

文/トライワークス

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