マニア心をくすぐる「ネタ」の宝庫!歴史の闇に挑む『天使と悪魔』のディープな世界
本日11日1日より、huluで『ダ・ヴィンチ・コード』(06)、『天使と悪魔』(09)、『インフェルノ』(16)と「ダ・ヴィンチ・コード」シリーズが揃って配信されている。今回紹介したいのは、『ダ・ヴィンチ・コード』に続く、ダン・ブラウン原作の映画化第2弾『天使と悪魔』。前作でも信じがたい「暗号解読」の能力を発揮した、宗教象徴学者のロバート・ラングトン教授だが、この『天使と悪魔』は、さらにディープなネタに食い込んでいく。最先端の素粒子物理学の研究所や、カトリックの総本山ヴァチカンが舞台となり、「科学と宗教」を巡る驚愕の陰謀劇が、このシリーズらしい超エンタメなノリで描かれていくのだ。知られざる世界の発見に満ちたという点では、『ダ・ヴィンチ・コード』の興奮を上回るだろう。
今回、ラングドン教授に託されたのは、秘密結社イルミナティによる、ヴァチカンの枢機卿たちの誘拐、および殺害予告事件。イルミナティはスイスのCERN(セルン/欧州原子核研究機構)から、信じがたい破壊力をもつという「反物質」も盗み出していた…。
イルミナティとは、あのガリレオら有名な科学者たちも関わっていたとされる組織で、ヴァチカンが弾圧。しかし現代まで密かに継続していたという設定だ。何やらカルト信仰のような怪しさとスリルが漂うなか、メインの舞台となるローマの各所で衝撃の事件が連続する。事件の現場には、世界最大の石造り建築であるパンテオンや、3つの巨大な噴水があるナヴォーナ広場、ヴァチカンと秘密の通路で結ばれたサンタンジェロ城といった有名スポットも含まれる。17世紀最大の芸術家といわれるベルニーニの彫刻もキーポイントだ。一部はセットによる再現だが、大がかりなロケで「ローマ観光映画」としての魅力も備えているのが、この『天使と悪魔』。ロマンチックな旅気分と、背筋も凍る事件。その組み合わせが、他の映画にはない感覚を届けてくれる。
さらに好奇心を高めるのは、ヴァチカンでのコンクラーベ(教皇選挙)。世界が注目するローマ教皇の選挙がどのように進むのかなど、ローマ市内に「ひとつの国」として存在するヴァチカンの実態には、驚きの要素がたっぷり。また、CERNで行われている壮大な研究(27kmもの円形のトンネルの中を、ミクロの陽子が光速で進む!)も紹介されるが、難しい用語を知らなくても、科学の最先端に素直に圧倒されるのが今作の醍醐味だ。
秘密結社、最先端科学、ローマ観光地、ヴァチカン内部と、マニア心をくすぐる「ネタ」の宝庫である『天使と悪魔』。とはいえ、ラングドン教授の推理はスピーディなので、複雑さや難しさを感じる瞬間はほとんどない。ラングドン役がハマったトム・ハンクスが、またもや決死のアクションも披露し、観る者の心をとらえるのは確実なので、空前の謎解きの世界に身を委ねたい!
文/斉藤博昭
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