【今週の☆☆☆】緊迫感満載のサイコ・サスペンス『透明人間』に、銃に翻弄される人々を描く『銃 2020』…週末観るならこの映画!
Movie Walkerスタッフが、週末に観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画。今回は、7月10日から公開中の作品をピックアップ。“透明人間”の恐怖が現代ならではの視点で蘇るサスペンスや、偶然拾った銃に魅了される女性を描く話題作が揃った。
元カレが透明人間に!?怯える女性の運命は‥『透明人間』(公開中)
映画史上において古くから映像化されてきた“透明人間”は、どこかレトロでユーモラスなイメージがつきまとうモンスターだ。ところが『ソウ』シリーズの創造者のひとりで、近作『アップグレード』では監督としての評価も高めたリー・ワネルが放つ本作は、ガチでシリアスなスリルを追求したサスペンス映画に仕上がっている。主人公は、大富豪にして天才科学者でもある恋人の束縛から逃れた女性セシリア。やがて透明人間に変貌し、執念深くつきまとってくる元カレに脅える彼女の運命を描き出す。いわば本作は変種のストーカー映画であり、その悪夢を誰にも信じてもらえない主人公の極限の不安をあぶり出す異常心理映画でもある。実力派の主演女優エリザベス・モスの迫真の演技と、ワネル監督の巧妙な“見えない恐怖”演出が相乗効果を生み、尋常ならざる緊迫感がみなぎる一作だ。(映画ライター・高橋諭治)
銃を巡り、狂気をはらんだ人々が交錯する『銃 2020』(公開中)
村上虹郎が拾った銃に支配されていく18年の『銃』を別の視点で描いた本作は、原案の芥川賞受賞作家・中村文則が初めて脚本も手掛け、主人公を女性に変えたこともあり、より生々しくセクシャルに濃度を増した仕上がりになっている。薄暗い雑居ビルで血に染まった銃を拾い、ゴミだらけの家に持ち帰った東子は、隣室の親子が殺した死体に向かって発砲して…。前作にも出演していた日南響子が美しくも危険なヒロインの東子を自身の魅力を全開して怪演!彼女に絡む謎の男に扮した佐藤浩市、ストーカー男役の加藤雅也、銃の行方を追う刑事役の吹越満がほかの作品では見られないクレイジーなキャラを楽しそうに体現しているのも見逃せない。そして、何よりも光と闇が完璧に設計された世界観が素晴らしい。それは佐藤浩市も公言しているように、武正晴が助監督で参加した石井隆監督の『GONIN』(95)のようなフィルム・ノワールを現代に蘇らせたような印象。頭を空っぽにして酔いしれて欲しい。(映画ライター・イソガイマサト)
週末に映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて!
構成/トライワークス