美しくもデンジャラス… 『リトル・ジョー』でベン・ウィショーが新種の植物に侵される!
持ち前の演技力と甘いルックスで、近年の英国俳優ブームの中心的存在を担うベン・ウィショー。ダニエル・クレイグ版『007』シリーズのQ役では、世界を駆け巡る敏腕スパイのジェームズ・ボンドを相手に、「僕なら紅茶を片手にPCひとつで世界を救う」と言い放つクールな理系男子ぶりが魅力だった。そんな彼が新たに理系男子を演じているのが、新作『リトル・ジョー』(公開中)。なんとも様になる白衣姿などを、ウィショーの劇中写真と共に紹介したい。
カンヌ国際映画祭で主演のエミリー・ビーチャムが主演女優賞を受賞したことも話題の本作。研究者アリスが開発した新種の花“リトル・ジョー”が人々に変化をもたらしていくというストーリーで、ウィショーはアリスの同僚クリス役を演じている。“リトル・ジョー”は、遺伝子の組み換えによって、香りをかいだ人に幸福感をもたらす特殊な花。
その花粉を吸いこんだクリスや、アリスの息子ジョーにもしだいに変化が現れて‥。その様子は花の特性どおりハッピーに見えるというよりも、「いつもとどこか違う」「様子がおかしい」といった不気味さをみせていくのが恐ろしい。ウィショーは、“リトル・ジョー”に静かに侵されていくさまを、ささいな表情の変化や不気味な間合いなどで体現。格別の存在感を見せている。
また、今回のウィショーは積極的で、想いをよせているアリスにアプローチを重ねる姿も見逃せない。“リトル・ジョー”の効果もあるのか、しつこく飲みに誘ったり、飲んでる最中も隙あらばキスをしようとしたりと、ぐいぐい迫る!ついには、アリスが帰宅すると、家の中に勝手に入り込んでアリスの息子と話しこんでいるなど、ちょっとしたストーカーと化しているのほど。なかなか振り向いてくれないアリスへのせつない想いや、苛立ちをにじませる苦悶の表情もたまらない。
そして、理系男子ぶりを披露してくれるのが、白衣を身にまとった研究所での姿!真紅の“リトル・ジョー”が咲き乱れるなか、ペパーミント・グリーンの白衣姿でたたずんでいるさまも美しく、なんとも絵になっている。
香りが重要なファクターになる本作の設定に、ウィショーの出世作になった『パフューム ある人殺しの物語』(06)を思い出す人も多いだろう。この作品で彼が扮したのは、天才的な嗅覚を持つ香水調合師。自分が殺した女性の死体から放たれる香りを忘れられず、理想の香りを求めて殺人を重ねる男を演じて鮮烈な印象を残した。キャラクターや作品のテイストは違うものの、本作でも香りに支配されておかしくなっていくさまは同じ。ウィショーを独特の存在たらしめる、不気味だけど美しく、無垢なのに色気があるという複雑な魅力は、こうしたユニークな役柄によく似合う。
Q役を続投した、007シリーズ最新作『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』(11月公開)も公開待機中のウィショー。その前に、ぜひ本作で彼の妖しい魅力を発見してみてほしい。
文/トライワークス