『劇場』の山崎賢人と行定勲監督を直撃「嫉妬心は誰にでもあるもの」
「俳優業で、僕も誰かに嫉妬心を抱くことがあります」(山崎)
実際にヒゲを伸ばした山崎は実にセクシーで、これまでに見せたことのない妙な魅力を放っていた。山崎は「確かに、最初に監督とヒゲの話をしました」と笑う。
「行定監督から、お話をいただいたのは今回が初めてでした。そこから、脚本を読ませてもらったら、めちゃくちゃおもしろいと思いました。僕は永田の人物像にすごく共感できたんです。なにかを表現をするという意味では、僕がやっている俳優業も同じですし、誰かに嫉妬心を抱いたりもします。また、沙希から自分にとって都合の悪い話をされると、話をそらして逃げるところや、沙希に対してイラッとしてしまう感じも、僕はすごくわかるなと思いました」。
舞台挨拶や記者会見、バラエティ番組での番宣などで見ると、いつも穏やかな笑顔と空気をまとっている山崎。そういうパブリックイメージがある彼が、“嫉妬心”や“イラッと”という言葉を口にするのはなんだか新鮮に思えた。
「僕もこの仕事をしていて、心に余裕がない時に、周りの人を傷つけるようなことを言ったり、冷たい態度を取ってしまうことがあります。もちろん、そういうことは良くないとも思いますが。劇中で永田が原付を乗り回して、沙希を無視するシーンもなんかわかるなと思ってしまいました」。
原付は、沙希が男性から譲り受けたものだったが、永田は沙希の前で原付を乗り回し、沙希をそのまま置いて帰ってしまう。行定監督は「そこをわかるのはヤバイね」とうれしそうに笑いを漏らすと、山崎は「そう思っちゃったんです。僕が変なんですかね?」と苦笑いする。行定監督は「いや、あのシーンはさておき、相手に対してイライラをぶつけちゃうというのは、僕もすごくわかります」と同意する。
ほかにも、沙希が男性からのもらいものだというジャンパーを着ているのを見て、永田が「なに?そのジャンパー」とヤキモチを焼くシーンも、おおいにうなずけたという山崎。
「ああいうふうに言いたくなってしまう感じも、よくわかるんです。でも、そういう永田の弱さや人間らしい部分を、僕は魅力的だなと感じたので、そこをしっかり演じたいなと思いました」。
行定監督は「永田って、本来はものすごく純粋で弱くてどうしようもないヤツ」としたうえで「なのにわざと悪ぶってる。そのどうしようもなさが、今回描くうえで、ものすごく大きなテーマでした」と言う。「それは又吉さんの原作にも、ちゃんと書かれていたので、そのどうしようもなさの具体例を、映画化して世に残したいと思いました。そして、山崎もそこをちゃんとわかってくれていたんです」。