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『劇場』の山崎賢人と行定勲監督を直撃「嫉妬心は誰にでもあるもの」

インタビュー

『劇場』の山崎賢人と行定勲監督を直撃「嫉妬心は誰にでもあるもの」

「作品は、お客さんに観てもらってこそ成立する」(山崎)

話題作が目白押しの山崎賢人
話題作が目白押しの山崎賢人撮影/河内彩

コロナ禍で公開延期となっていた『劇場』は、公開される劇場の規模が縮小された一方で、Amazon Prime Videoにて全世界で独占配信されることとなった。『パラサイト 半地下の家族』(公開中)で第92回アカデミー賞を制したポン・ジュノ監督も本作を絶賛しているということで、『劇場』はすでに海外での評価も高い行定監督の最新作として、これまでにない広がりを見せてくれそうな予感。

その一方で本作を大スクリーンの試写で観賞した筆者は、『劇場』だからこそ、ぜひ“劇場”で観てほしいと言わずにはいられない。なぜなら、“劇場”はこの映画におけるもう一つの主役でもあるからだ。
本作では、シーンが切り替わる際に暗転したり、観る者が実際に劇場に座って役者の芝居を観ているような構図で撮られたシーンがあったりして、演出の妙味が感じられる。そして最後に『劇場』というタイトルを目にした時、永田と沙希が紡いだ確かな愛が走馬灯のように押し寄せるという造りも完璧だ。

また、行定監督は自他共に認める“原作原理主義者”で、『世界の中心で、愛をさけぶ』しかり『ピンクとグレー』(16)しかり、毎回原作を愛し、リスペクトしたうえで、その延長線上において、巧みなアレンジを加える。本作では特に、山崎と松岡が織りなすラストシーンが白眉で、原作者の又吉自身をもうならせた。それは、“劇場”という空間で、永田たちのやりとりを目撃できるというもので、実にエモーショナルなシーンになっている。

お互いにかけがえのない存在になっていく永田と沙希
お互いにかけがえのない存在になっていく永田と沙希[c]2020「劇場」製作委員会

思えばこのインタビュー取材を行ったのは2月上旬で、まさか新型コロナウイルス感染症のパンデミックが世界規模で起こることなど、想像もしていなかった。この数か月で、日常生活はもちろん、映画業界も激変したのは言うまでもない。だから最後は、3月25日のコロナ禍において、無観客の完成披露イベントを行った際に、山崎賢人が放った言葉で締めくくりたい。

「『劇場』は観終わったあと、大切な人を思い浮かべるような映画になっていると思います。自分が生きていくなかで、上手くいかないことってたくさんあると思いますが、そういうことも、最後にはいい方向へ向かっていくんじゃないかと思えるような作品になったのではないかと。(無観客でイベントを開催してみて)お客さんのいない劇場は寂しいんだなと思いました。やはりお客さんに観てもらってこそ、作品は成立すると改めて思いましたので、その魅力を伝えていけるように、頑張りたいと思います」。

取材・文/山崎伸子

※山崎賢人の「崎」は立つ崎が正式表記
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