『君が世界のはじまり』ふくだももこ監督と脚本家の向井康介「活字の世界をいかにして映像に翻訳するか」

インタビュー

『君が世界のはじまり』ふくだももこ監督と脚本家の向井康介「活字の世界をいかにして映像に翻訳するか」

『君が世界のはじまり』ふくだももこ監督と脚本家の向井康介
『君が世界のはじまり』ふくだももこ監督と脚本家の向井康介撮影/河内 彩

小説家で映画監督でもあるふくだももこが、第40回すばる文学賞佳作を受賞した自身の短編小説「えん」と「ブルーハーツを聴いた夜、君とキスしてさようなら」を一本の映画として撮りあげた『君が世界のはじまり』(7月31日より公開中)。原作に共鳴し、脚本を手掛けたのは、『リンダ リンダ リンダ』(05)や『愚行録』(17)などの脚本家、向井康介だ。世代の異なる2人が初タッグとなった本作について、製作秘話を聞いた。

ふくだ監督と向井をつないだのは、本作のプロデューサー、佐々木史朗だ。ふくだ監督は元々、向井のファンだったそうで「佐々木さんが、向井さんの名前を挙げてくださった時は、『え!向井康介さん!?すごい!』と思いました」と興奮しながら話す。

「向井さんが引き受けてくださるのなら万々歳でした。お返事をいただいたときは嬉しかったです。そして、2つの小説を一つにしたプロットを見せてもらったら、最高におもしろかったんです。私には、自分の小説を映画の脚本にするという技術がまだないので、プロの脚本家はやっぱりすごいなと思いました」。

高校2年生の優等生“えん”(松本穂香)
高校2年生の優等生“えん”(松本穂香)[c]2020『君が世界のはじまり』製作委員会

現在43歳の向井は「もう青春映画は書けない」と最初は本作の脚本を断ろうとしたそうだが、原作を読んで思い直した。
「ふくださんが書いた青春は、自分が過ごした時代の青春とよく似ていたので、これなら僕もわかると思ったんです。また、原作のキャラクターがしっかりできあがっていたので、僕としては、ふくださんの活字の世界をできるだけ壊さずに映像に翻訳できるか、ということに注力しました」。

ふくだ監督の前作『おいしい家族』(19)に続き、本作でも主演を務めたのは、『青くて痛くて脆い』(8月28日公開)や『みをつくし料理帖』(10月16日公開)が待機中の松本穂香。演じるのは、大阪のとある町に住む高校2年生の優等生“えん”役だ。彼女の親友である琴子(中田青渚)は、勝ち気な性格で、男子と付き合ったり別れたりを繰り返してきた。ところがある日、琴子がサッカー部のナリヒラ(小室ぺい)に一目惚れしたことで、えんとの間に溝が生まれていく。

本作は、この3人と、母親が家を出てから父親に嫌悪感を抱く純(片山友希)、東京からの転校生、伊尾(金子大地)、琴子に思いを寄せるサッカー部キャプテンの岡田(甲斐翔真)が織りなすほろ苦い青春映画となっている。

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