『君が世界のはじまり』ふくだももこ監督と脚本家の向井康介「活字の世界をいかにして映像に翻訳するか」

インタビュー

『君が世界のはじまり』ふくだももこ監督と脚本家の向井康介「活字の世界をいかにして映像に翻訳するか」

「映画ならではのオリジナルシーンが新鮮でした」(ふくだ監督)

小説家でもある、ふくだももこ監督
小説家でもある、ふくだももこ監督撮影/河内 彩

向井は、2つの小説を1つにまとめるうえで、えんを中心にした青春群像劇にすると決めた。「『えん』と『ブルーハーツ〜』のそれぞれのキャラクターを同じ高校の生徒にし、群像劇の手法として、6人全員に共通のできごとを体験させようと思いました。そこで、彼女たちを夜のショッピングモールで会わせることを決めて、そこに行かせるための仕掛けを書いていきました」。

5人がショッピングモールで顔を合わせる
5人がショッピングモールで顔を合わせる[c]2020『君が世界のはじまり』製作委員会

閉店した夜のショッピングモールに忍び込んだえんたちが、トイレットペーパーを紙テープさながらに吹き抜けのフロアから階下に投げたり、ソファに座って、それぞれが抱える想いを吐露したりするシーンは、本作のハイライトの一つだ。

「昔は照れくさくて、ああいうシーンを描けなかったのですが、今回はできました。それは、原作を書いたふくださん自身が全然照れていないからだと思います。結構ストレートに感情を表現しているので、そこが気持ちいいなと思いました」と向井は言う。

ふくだ監督は、同シーンについて「横並びで語り合うのは、映画ならではのオリジナルシーンです。ああ、えんたちは、こんなふうに考えていたんやと、自分自身も初めて知った部分があり、とても新鮮でした」と、うなる。

ふくだ監督も、原作とは違う設定を楽しんだ。「えんと琴子が授業をさぼり、旧講堂で話をするシーンを撮るのを楽しみにしていました。原作だと2人が入り浸るのは女子トイレでしたが、ロケハンであの講堂を見つけたんです。不思議な空間で力があったので、2人の関係性や、脚本に書いてあるやりとりが生きるし、2人がナリヒラくんと出会う場所としてもふさわしいなと思いました」。

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