『君が世界のはじまり』ふくだももこ監督と脚本家の向井康介「活字の世界をいかにして映像に翻訳するか」

インタビュー

『君が世界のはじまり』ふくだももこ監督と脚本家の向井康介「活字の世界をいかにして映像に翻訳するか」

「ふくださんのいいところは、とにかく迷わないところ」(向井)

『リンダ リンダ リンダ』や『愚行録』などの脚本家、向井康介
『リンダ リンダ リンダ』や『愚行録』などの脚本家、向井康介撮影/河内 彩

えんと琴子が感情をぶつけ合う、校庭でのラストシーンは、ふくだ監督にとっても想い出深いシーンとなった。
「実はあのシーンは、スケジュールの関係で序盤に撮影したんです。でも、とてもいいシーンになったという手応えを感じたので、いま思えば最初に撮れて良かったなと思います。これで、よほどのことがないかぎりこの映画は大丈夫だという、自分の安心材料になったんです。最初は講堂でラストシーンを撮る予定だったものを、ロケハンで校庭にあるものを見つけて変更しました。映画のラストにふさわしい光景でした」。

向井は、ふくだ監督の現場に足を運んだ時、迷いのないリーダーシップを発揮する彼女に感心したそうだ。
「ふくださんのいいところは、とにかく迷わないところ。欲しい画がハッキリあるので、迷って頭を抱えている姿なんて見たことがないですし、そういう凛とした姿勢は見ていて気持ちが良かったです。もちろん、裏ではもしかして悩んでいたのかもしれないけど。若いのにしっかりしていて、俳優やスタッフを引っ張っていました」。

えんは、琴子が一目惚れしたナリヒラ(小室ぺい)と交流していく
えんは、琴子が一目惚れしたナリヒラ(小室ぺい)と交流していく[c]2020『君が世界のはじまり』製作委員会

ふくだ監督は28歳で、向井とは一回り以上離れているが、だからこそ向井は常に彼女をサポートしようと心に決めていたそうだ。
「こんなに若い監督と組んだのは今回が初めてでした。ふくだ監督は『こういう画を撮りたい』というバイタリティがすごかった。自分も、26、27歳のころは、ほぼ山下(敦弘)くんと組んでいましたが、やりたいことがあっても、いろいろな障害もあり、やはりプロデューサーや周りの人たちと闘っていたんです。だから、今回僕は、ふくださん側に立ち、共に闘ってあげたいと思いました」。

ふくだ監督も「向井さんは、いつも私の味方をしてくれました」と感謝する。
また、完成した映画について向井は「いい映画でしょ。僕自身も、とても好きな映画になりました」と賛辞を送る。

「青春映画って、10代、20代の若い役者本人の姿形をありのままスクリーンに残すことが一番大事だと僕は思っています。例えば『ぼくらの七日間戦争』の宮沢りえさんや、『渚のシンドバッド』の浜崎あゆみさんなどのミューズがそうです。そういう意味では、松本穂香さん、中田青渚さん、片山友希さんがすごくいい。この先、彼女たちが活躍していき、いつか振り返った時、この作品のなかでしか見られない表情が収められている。荒削りなところがそのまま残っているのも、若さが弾けている感じでいいんです」。

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    3.3
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    ふくだももこが監督を務め自身の原作小説を向井康介が再編した松本穂香主演の青春映画
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