殺人事件や自殺、住人の孤独死…実在の「事故物件」を訪ねる
駅から10分ほど歩いた住宅街にあるアパートの2階にある一室が、今回訪問した事故物件。靴を脱いで部屋に上がると、左手にあるのがご遺体の発見された浴室だ。浴槽内で発見されたのは亡くなってから2か月が経過したご遺体だったということで、発見当時はやはり臭いがひどかったらしく、2度の清掃が入ったうえに、浴槽を取り除きシャワールームに改装したのだそうだ。
孤独死の場合、特に発見が遅れる傾向があるようで、発見の原因になりやすいのが家賃の滞納を不審に思った管理会社が訪問してみると…というパターンが多いそう。
また、マンションや鉄骨造りだと1か月や2か月で近隣に異臭が漏れることはそうないのだが、古い木造物件の場合は近隣住民からのクレームが入って、発見にいたることも多いようだ。
実際の物件のリビングに目を向けると、フローリング、サッシ、エアコンは新築物件のように綺麗に清掃されており、劇中に登場する物件のような陰鬱な印象はまったくない。
それもそのはずで部屋を清掃する、いわゆる“特殊清掃”の際に、多くの場合ご遺体があった場所やその付近の床などは全部張り替えて綺麗にしてしまうのだという。
その甲斐あって、記者らが物件内に足を踏み入れた際にはまず澄んだ空気に驚いたほど。嗅覚から感じられる清潔さは、「事故物件」のイメージから来る精神的な抵抗感を大きく軽減するものだろう。
見学を終えた記者らは浴室に手を合わせ、暗くならないうちに物件をあとにした。
我々が訪問した物件では、劇中でヤマメが体験したような怖ろしいことは起こらなかったが、原作者の松原は最近も沖縄に借りている10軒目の事故物件で背筋も凍るような体験をしたそうだ。
「沖縄の某所に、地域の皆さんなら必ずご存じの“お化けマンション”というものがあって。幽霊が出ると噂がたえない一方で、住んでいる方たちは幽霊を見ないというんですよ」。
念願が叶ってその物件を借りることが出来た松原は、自分が寝ている姿を定点カメラで撮影した。「夜中の2時くらいに急に大きな音が鳴ったんです。すると、そのあと1分近く、僕が首を大きく震わせて痙攣しているような映像が写っていたんですよ。僕は全く覚えていなかったんですが…。『住んでいる方たちは幽霊を見ない』というのは、自分がおかしくなってしまうということだったんですね」と、恐怖体験を振り返った。
なお、本作の撮影現場では原因不明の電気系統トラブルが頻発したそうで、亀梨の移動車の2回のエンジントラブルをはじめ、突然のモニターのブラックアウト、シャワーシーンで急に冷水しか出てこなくなる…などがスタッフを悩ませたとのことだ。
実話をベースにしつつも中田監督の手腕によってエンタテインメントに昇華された『事故物件 恐い間取り』でヒヤリとして、まだまだ厳しい残暑を乗り切ってみてはいかがだろうか。
取材・文/編集部