行定勲が語る、新しい映画のあり方と『窮鼠はチーズの夢を見る』に込めた想い
行定監督は、“映画館で映画を観る”という行為がもつ意味についても、次のように考えている。「アトラクションやライブと同じように、『映画を観る』ために映画館へ行くということになっていくんだと思っています。ストリーミングで観たけれど、やはり“劇場で観たい”という根源的な欲求があるんだ、ということが映画『劇場』を通じて実感できました。『映画館でかかる映画は選りすぐりの作品なんだ』と、観客の皆さんが意識してくれるかどうか。そういう意味で、『窮鼠はチーズの夢を見る』を観るために劇場に行きたい、と思ってもらえるといいですね」
『窮鼠~』は、女性に流されやすいエリートサラリーマンの恭一(大倉忠義)と、彼の妻から依頼された浮気調査をきっかけに恭一と接近する今ヶ瀬(成田凌)の関係を描いた、苦くてせつない恋愛映画だ。「『窮鼠~』の原作は“社会”を描いているのではなくて“個人”を描いていること。社会の感情がどこにも介在しないんですよ。LGBTQをテーマにした作品は世界の映画祭でよく観るんですが、どうしてもマイノリティの息苦しさのようなものが作品に介在していないと、いまの社会問題に直面している映画じゃないというふうにみなされるんですよね。その考え方はよくわかるんですが、脚本家から『窮鼠~』は『行定勲が撮ってきた恋愛映画の延長線上にあるべきだ』と言われたように、いま、男性同士の恋愛を描くことを白い目で見る人がマイノリティで、もはや時代が変わっていると思っています」
Next
女よりも男を選ぶ“マジョリティ”の男を描けるかが勝負だった
作品情報へ