ローランド・エメリッヒ監督に直撃インタビュー。『ミッドウェイ』で豊川悦司らに感謝
「豊川悦司らと仕事ができたことは大きな喜びだった」
特筆すべき点は、日本からも実力派俳優陣が参加している点だ。豊川悦司が山本五十六海軍大将役、浅野忠信が山口多聞少将役、國村隼が南雲忠一中将役と、いずれも実在の将校に扮している。
「3人と仕事ができたことは僕にとって大きな喜びだった」と笑顔を見せる監督。
「キャスティングのやりとりはスカイプでおこなったが、3人とも出演してほしい俳優リストのトップに名前が挙がっていた方々だったので、決まった時は信じられない気持ちだった。通訳を入れてのやりとりは、とてもおもしろい経験になったが、そこで学んだのは演技は国境を超えるということだったんです」。
3人とは、脚本段階から、意見交換ができたそうだ。「特に豊川さんは、山本五十六役について、こうしたいという意見を出してくれました。僕は常に、映画作りはコラボレーションだと思っているので、役者それぞれのキャラクターに関する洞察を、ちゃんと聞くようにしています。今回も非常にいい形でコラボレーションができたと思う」。
また、劇中で、戦火においてドキュメンタリーを撮ろうとするジョン・フォード監督が描かれているが、これも実話をベースにしたエピソードだ。戦地で撮影された『ミッドウェイ海戦(原題:The Battle of Midway)』(42)や『真珠湾攻撃(原題:December 7th:The Movie)』(43)は、2本ともアカデミー短編ドキュメンタリー映画賞を受賞している。
「日本軍が攻撃した時、ジョン・フォード監督は、実際に撮影でミッドウェイにいたそうだ。彼は本当に怖い物知らずで、劇中と同じようにケガも負ったそうなので、そういうシーンを入れたいと思った。当時アメリカの監督たちは、自国の人々に本物の戦争がどんなものかを見せるためにドキュメンタリーを撮っていたんだ」。
そういう意味で言えば、エメリッヒ監督も、アプローチは違えど、真珠湾攻撃やミッドウェイ海戦がどういうものだったのかを、現代に生きる我々に見せてくれたわけで、本作が世界中で劇場公開されることは、大いに意義深いと感じている。言わずもがなスペクタクル作品を得意とするエメリッヒ監督作だから、大スクリーンに見合う娯楽作になっているのだが、お互いの立場による不理解、不寛容が問題となったコロナ禍の最中に観てみると、一層、強いメッセージを感じ取れるのではないだろうか。
取材・文/山崎伸子