園子温監督と真利子哲也監督が語る、オムニバス映画『緊急事態宣言』の舞台裏
「『孤独な19時』は、コロナ禍の話を御伽話にするために、コロナ収束後の設定にしました」(園)
園監督が撮った、斎藤工主演作品『孤独な19時』は、新型コロナウイルス(COVID- 19)のパンデミック収束後、さらに狂暴なウイルスが蔓延し、長期間の自粛生活を強いられるという設定の物語だ。斎藤演じる主人公の音巳は、生まれてから一度も家から出たことがなかった。
――ソーシャルディスタンスを50メートルも取り、半永久的にステイホームが続くという設定は、いまとなっては、絵空事とも思えない気がします。
園「最初にコロナウイルスが中国で広まった時、スーパーでめちゃくちゃ距離を取って並んでいる報道を観て『こんなことが起きるわけないだろう』と、遠目で見て呆れていたんです。でも、実際に世界中で同じ運命が待ち受けていた。発想は、コロナ禍の話ですが、御伽話にするために、それが収まった後という設定にしました」
――ナレーションも園監督が担当されているので、よりしっくりきました。
真利子「僕も聞いて、すぐに園さんの声だとわかりました。説得力がありますよ」
園「いやいや、あれは、製作費がないからやったまでです(苦笑)」
――斎藤工さんのキャスティング理由についても聞かせてください。
園「斎藤さんは、絶対に“自粛好き”だと思ったからオファーしました。実際に彼は、家に
いることが楽しくてしょうがないし、天井の木目と語り合うらしく『“木目友達”が3木目くらいいる』と言っていました(笑)。だから、適切なキャスティングだったと思います」
――確かに今回の役柄はぴったりだったと思いますが、現場ではどんなやりとりをされたのでしょうか?
園「斎藤くんはこっちのリクエストを受け入れて出す名人です。全部を変えて、俺のものにしたいとか、そういう自我を出すタイプの俳優ではなく、非常にスマートな人。本当にすばらしかったです」
――真利子監督は『孤独な19時』を観て、どんな感想を持ちましたか?
真利子「園さんが、今回の状況とテーマで、どうやって作品を撮っていくんだろうと思っていたんですが、すごく映画として勝負されているなと思いました。映画のラストに提示されている、“ある台詞”がぐっと刺さりました」