園子温監督と真利子哲也監督が語る、オムニバス映画『緊急事態宣言』の舞台裏
「テーマに対して、バカみたいに真面目に取り組んだのが、この2作品だった」(園)
――日本では5月25日に緊急事態宣言が解除されました。劇中の最後に6月1日の映像が流れ、日本では少し自粛が解かれている映像が流れますが、まだまだコロナ禍にあります。また、それとは別問題として、アメリカで起きたジョージ・フロイド抗議運動のデモの映像が映されていました。
真利子「国によって自粛解除の時期が違いますし、自粛が明けて外に出た感じも出ているとは思いますが、まだまだコロナの影響は、続いています。5月末頃からデモ運動が起こったのも事実ですが、それはずっと続いている問題で、いまに始まったことじゃない。自分は日本にいると、なかなかそういう意識に触れることが少ないのですが、遠い国の他人事ではなく、いろいろと考えさせられました。」
――『MAYDAY』の最後に明示されるフレーズは、コロナ禍で観ることも影響してか、いつも以上にとても心に響きました。
真利子「あれは、ぴったりの日本語訳がなかったんです。英語としては、諦めの言葉だったり、前向きな言葉だったりして、文脈や受け取り方によって全然印象が違うらしくて、ここで長々書くよりもそれが合っている気がしたんですよね。世界でコロナは収束していない、そしてデモの映像の後に、最後にどんな言葉を残すべきか、ひたすら考えましたね」
園「いま思えば、テーマに対して、バカみたいに真面目に取り組んだのが、この2作品だったかなと。ほかの監督は、変化球的な作品だったけど、真利子くんと僕は正面から行ってしまった感じ」
Netflixオリジナル映画『愛なき森で叫べ』(19)が話題となり、ニコラス・ケイジ主演のハリウッドデビュー作『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』が待機中の園監督と、『宮本から君へ』(19)で映画賞を席巻し、取材時は短編映画の撮影でシカゴに滞在していた真利子監督。
この2人の作品だけではなく、コロナ禍でアグレッシブに撮られた5作は、いずれもパワフルな作品に仕上がっているので、5本をイッキ観してもいいし、気になる作品から攻めていくのもおすすめだ。
取材・文/山崎伸子