ジャッキー、トム・クルーズも顔負けの超危険スタントを連発!ルパン三世のモデルにもなった俳優とは?
宇宙での映画撮影計画が話題を集め、近年の身体の張り方が尋常じゃないトム・クルーズや、これまでに数え切れないほどのケガを重ねてきたジャッキー・チェンなど、スタントマンを使わずに自ら激しいアクションをこなしてしまう俳優たち。危険を顧みない姿勢とそのプロ根性で観る者を興奮の世界に誘ってくれる彼らの先駆者とも言える存在に、ジャン=ポール・ベルモンドの名が挙げられることをご存知だろうか。
ベルモンドと聞いて、おそらく多くの人の頭にまず浮かび上がってくるのは、『勝手にしやがれ』(59)、『女は女である』(61)、『気狂いピエロ』(65)といったジャン=リュック・ゴダール監督の作品たちではないだろうか。ゴダールほか、のちの巨匠たちとタッグを組んだ数々のヌーベルバーグ作品で国際的な脚光を浴びたベルモンドは、同時にコメディタッチのエンタメ活劇でもその才能を開花。エンタメの王道をゆく大スターとしての路線へ徐々に突き進んでいき、スティーブ・マックイーン、クリント・イーストウッドと肩を並べる60~70年代のアクション界のレジェンドとしての地位を築いていく。
子どものころからサッカーやボクシングに興じるスポーツマンだったベルモンドは、その運動神経を生かして自らハードなスタントをこなしており、その危険なアクションやチャーミングな魅力でヒットの山を築き上げていった。そして、「ルパン三世」や「コブラ」といった日本のコミックや、ジャッキー・チェンやチョウ・ユンファをいった俳優たちなど、枚挙に暇がないほど多くの作品や人物に影響を与えてきた。
そんな彼の作品群を集めたのが、10月30日より全国で順次開催されている「ジャン=ポール・ベルモンド傑作選」だ。アクション路線への第一歩となった『大盗賊』(61)をはじめ、日本初劇場公開となる『プロフェッショナル』(81)、“怪盗ルパン+アル・カポネ”と呼ばれたギャングの生き様を描く『オー!』(68)など貴重な8作品がラインナップされており、ベルモンド自らが挑んだスタントを存分に堪能できるものとなっている。
たとえば、ベルモンドが俳優キャリアで初めて刑事役に挑み、パリで続発する連続殺人事件を追う『恐怖に襲われた街』(75)では、カーチェイスや銃撃戦をはじめ、高層ビルや走る地下鉄の屋根の上での追走劇、さらにヘリに吊るされてのダイビングなどド肝を抜くアクションを次々と披露。のちに「ポリス・ストーリー」シリーズに与える影響をもろに受け取ることができる。
さらに映画撮影現場を舞台にした『ムッシュとマドモアゼル』(77)でベルモンドは、スーパースターとスタントマンという、うってつけとも言える1人2役に挑戦。コミカルな作品だが、階段落ちに虎との格闘(!)、ヘリからセスナへの飛び移りなどアクションは本格的で、まさにコミカルだがカッコいいベルモンドがスクリーンに映しだされている。
紹介した作品以外にも、国際的オールスターキャスト集結で現金輸送列車強盗を描く『大頭脳』(69)、ベルモンドが非合法な手段で難事件を解決するトラブルシューターを演じた『危険を買う男』(75)、表と裏の2つの顔を持つ男に扮した『警部』(79)を上映。劇場初公開となるものや、ソフト化しておらず数十年ぶりの上映となるものなど、なかなかお目にかかることができないこれらの貴重な作品たちで、ベルモンドのアクションスターぶりに見入ってほしい。
文/トライワークス