『樹海村』清水崇らが明かす、“コロナ禍の映画づくり”のリアル「攻めなきゃいけない部分がある」
「映画撮影は“不要不急”と思われかねない。地元の方がいることは心強かった」(福島)
『楽園』(19)や『糸』(20)など、話題作が相次ぐ瀬々敬久監督が、中山七里の同名小説を映画化する『護られなかった者たちへ』は、2011年3月11日に発生した東日本大震災に端を発したある事件を追う刑事と、刑期を終えて出所したばかりの男の姿を描いたヒューマンミステリー。『8年越しの花嫁 奇跡の実話』(17)に続いて佐藤健と瀬々監督がタッグを組み、阿部寛や清原果耶、林遣都、吉岡秀隆、倍賞美津子ら実力派俳優が脇を固める。
福島「原作が宮城県を舞台にした作品だったので、瀬々監督もオールロケでやりたいと2年近く前から準備をしていました。当初は4月頃の撮影を予定していましたが、緊急事態宣言が発令されたことでロケ地の方から『無理ですよね?』と相談がきて、受けていただく側にも安心できる材料がないと無理だということはよく理解できました。いち早く延期の判断をして、自粛期間中も不要不急の外出はやめましょうとスタッフに伝達しました。
確かに仕事ではあるけれど、映画撮影は見方によっては“不要不急”だと思われかねない。悩みながらフィルムコミッションの方たちと探っていき、6月20日から撮影を再開しました。東京から行くということは宮城県の方たちも不安だったと思います。だからこそ、間に立ってくれる地元の方がいることは心強かったです」
渡邊「6月にクランクインするということで調整を始めましたが、その段階ではまだ県をまたいだ移動の自粛が続いていました。この作品では宮城県の6つの市町村で撮影されましたが、それぞれの地域で意識も警戒心も異なっていましたので、使わせていただく施設の担当者の方たちと調整を進めていきながら対応していきました。
我々のガイドラインはジャパンフィルムコミッションで作成中だったガイドラインを参考に、宮城県独自の考え方を踏まえながら作成していきました。ロケ受け入れにあたって守ってほしいことや衛生対策、現場での予防対策を最大限に講じることをチェックリストとして加えることで、ロケ地の交渉を進めることができました。製作側のガイドラインと我々のチェックリスト、その両方を提示することで地域の方々に安心感を持っていただけたかなと思っています」
「新しいものにチャレンジしながら、積極的に作りつづけていかなければ」(福島)
福島「エキストラに関しても、密を避けることが大前提となっていたので人数を集めることができず、県外からは募集しないことを決め、監督は最初300人くらい欲しいと言っていましたが、結局は50人くらいに減らしました。ほかにも市街地でロケをしないことも決め、天気が多少悪くても撮影を続行するなど、緊張感があってゆとりのない合理的な撮影をひたすら繰り返すことになりました。撮影日数も当初予定していた45日間を31日間に圧縮し、台本も切ったし、元々キャスティングしていた俳優さんの出演がなくなってお詫びをしたこともありました。
こういう状況だからこそ、予算とスケジュールを十分に確保することが最低限必要になります。しかしその反面、興行的なリスクはどうしても高まってしまう。そこでどれだけ企画の力で、おもしろいものを作っていけるか。プロデューサーや監督、脚本家の方たちと二人三脚でやっていくことが大事になってきます。作り続けないと邦画実写映画は下火になってしまう。映画館がストップしていた状況は、個人的にもすごくしんどかった。でもエンタテインメントというものの必要性が自分のなかでも高まっていたので、発信する側も一枚岩になって、新しいものにチャレンジしながら積極的に作り続けていかなければと思っております」
取材・文/久保田 和馬