脚本はつらいけど編集は楽しい!?『ビューティフルドリーマー』本広克行&小川紗良が語る映画作りの苦楽
いま一度、初期衝動に立ち返って監督たちが好きに映画を撮る。いわば映画実験レーベルを、本広克行、押井守、小中和哉、上田慎一郎の4人が立ち上げた。その名もズバリ、「Cinema Lab(シネマラボ)」。記念すべき第1作は、押井原案・本広監督の『ビューティフルドリーマー』(公開中)。初めて映画を撮る大学生たちの青春群像というメタ構造的な意欲作の現場を、本広監督と主演の小川紗良が振り返り、トークに花を咲かせた。
「映画に関わる人ってずっとモラトリアムなところがある」
──早稲田の映研での監督経験がある小川さんは、まさしく本作にピッタリの人選だったと思います。
本広「僕が知っていた女性の監督さんたちは、どこか男まさりな雰囲気があって。でも、紗良ちゃんたちの世代になると、だいぶ印象が変わりますね。物腰は柔らかく、かつ作家性がある。なんでだろう。機材が安価で手軽に使えるようになったからかなあ?昔の8mmカメラはフィルムの現像代がめちゃくちゃ高くてね。しかもフィルムって触ると手が汚れるから、女の子に敬遠されるんです(笑)」
小川「この映画の序盤で、古いフィルムを見つけて映写するシーンがありますけど、大学の映画サークル時代に、まったく同じ経験をしたことがあって。あのカタカタ音だったり、光の感じが逆に新鮮で楽しかったのを思い出しました。それと斎藤工さんが演じられた先輩のような“伝説のOB”。『そうそう、いるいる!』って(笑)」
本広「38歳で、いまだモラトリアムってヤバいよね、なんて現役の後輩たちから言われちゃってね」
小川「ただ、映画に関わる人ってずっとモラトリアムなところがあって」
本広「わかるなあ。あとさ、映画で一番しんどいのは脚本を書く作業じゃない? 本当、大変だから」
小川「書かないと撮れないので、精神的にキツくて。でも、編集はすでに素材が全部そろっているから、すごく楽しいんですよね(笑)」
本広「音と映像が合う瞬間って、すごく感動的じゃない?」
小川「はい、編集していて一番テンションが上がる時ですよね」
──撮っている時はどうですか?
小川「楽しいけど…大変です(笑)」
本広「僕は結構しんどい。ほら、予算の中でどれだけ撮れるか神経を使うから…。うまく撮れなかった時の『アチャ〜』な苦味を味わいたくないから、管理能力が高くなるんですよ。それで、演者さんたちの体調の変化にも敏感になる」
小川「なるほど〜」
本広「でもさ、不思議なんだけど、この作品は現場のことをあんまり覚えていなかったりするんだよね」
小川「そうなんですよ、つながった映画を見て思い出すことが多かったんです。本当に夢だったんじゃないかなって思ったりもして」
本広「短期間で怒涛だったしね」