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『トータル・リコール』“血生臭い”未来像を支えた、精巧なミニチュアと特殊メイク秘話

コラム

『トータル・リコール』“血生臭い”未来像を支えた、精巧なミニチュアと特殊メイク秘話

『遊星からの物体X』のスタッフが造形したミュータントたち

火星に暮らす突然変異した人類“ミュータント”など、印象的なキャラクターの造形を手がけたのは、『ハウリング』(81)や『遊星からの物体X』(82)などでSFXや特殊メイクに革新をもたらしたロブ・ボッティン。ボッティンの特殊メイクでは、俳優の顔の鋳型を作り、そこに流し込んだ粘土を削って特徴づけていく。粘土型が完成するとそこにゴム素材を入れ、そのゴム素材が俳優の顔に張り付けられる。工程には1週間で終わるものもあれば、繊細な作業を要する場合は4か月におよぶこともあったそう。

有害な放射線が遺伝子に影響をおよぼし、突然変異した人類たち
有害な放射線が遺伝子に影響をおよぼし、突然変異した人類たち[c] 1990 STUDIOCANAL

本作に登場するロボットが操縦する未来のタクシー“ジョニー・キャブ”など、アニマトロニクスで生みだされたキャラクターもボッティンが担当。完成に7か月かかったものもあり、メイクにエレクトロニクス、視覚効果などあらゆる要素をうまく組み合わせることで制作されている。動きをリアルに見せるため、皮膚下の筋肉を操作し、極小チューブを挿入してよだれを垂らすといった様々なディテールが、試行錯誤を重ねながら加えられていった。

ミュータントの造形やアニマトロニクスは、SFXや特殊メイクに革新をもたらしたロブ・ボッティンが担当
ミュータントの造形やアニマトロニクスは、SFXや特殊メイクに革新をもたらしたロブ・ボッティンが担当[c] 1990 STUDIOCANAL

かくして創造された、“血生臭い”未来の地球と火星を舞台に、シュワルツェネッガーが大暴れし、襲い来る敵を次々と血祭りに上げていく『トータル・リコール』。ストーリーは急展開の連続で、ナナメ上のぶっ飛んだ演出はいつ観ても色褪せない。
4K映像になったことで、まるで臭気が漂うような鮮烈さをも増した本作を、ぜひスクリーンで堪能してほしい。

文/平尾嘉浩

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