柳楽優弥、30代で次なる飛躍へ。コロナ禍で芽生えた「自分の声にも耳を傾けていきたい」との想い
「30代のスタートに『太陽の子』をできたことは、ものすごく大きなこと」
30歳となった2020年は、映画『今日から俺は!!劇場版』、ドラマ「太陽の子」がお披露目となり、『今日から俺は!!劇場版』では福田組のなかで、卑劣な番長役として強烈なインパクトを残した。一方「太陽の子」では、第二次世界大戦末期を舞台に、核エネルギーの研究を進めつつも、科学者として兵器開発を進めていくことに苦悩する研究者を演じた。柳楽は「『太陽の子』で30代のスタートを切れたことは、自分にとってものすごく大きいこと」と語る。
「発信すること、伝えることの責任感を感じた作品ですし、自分のなかに一つ自信を持つことができた作品です。描くテーマも繊細なので、監督とたくさん話し合って、役作りをしていきました。スタッフ、キャスト、すべてが最高で、関わったみんなが大事に思っている作品。劇場版が2021年公開になりますが、世界に羽ばたいていってほしいと思っています。僕にとってずっと大切にしていきたい作品です」とまた一つ、宝物が増えた。
また、30歳のアニバーサリーイヤーに、自身にとって初のパーソナルブック「やぎら本」も上梓。これまでの軌跡を語るインタビューや、是枝監督、クエンティン・タランティーノ監督らと対談もかなったが、「思いだしたら恥ずかしいような過去まで振り返って(笑)。いろいろ思いだして『どうして、あの時あんなことしちゃったんだろう』と恥ずかしくなったり、逆に『よくやったな』と褒めたいこともあったり」と自らと向き合ういい時間になったという。
「タランティーノ監督は、『誰も知らない』でカンヌの賞をいただいた時の審査委員長だったんです。当時の僕のことを覚えていてくれて、すごくうれしかったですね。僕はいま、英語を勉強しているんですが、英語で会話できたこともうれしくて。タランティーノ監督って、ものすごいマシンガントークなんですよ!」と思わず笑顔がこぼれる。
「コロナ禍で自分の心を整えた。自分の声にも耳を傾けていきたい」
「やぎら本」の制作過程と共に、コロナ禍という状況もまた、「パラダイムシフトのような時代。自分を冷静に見つめて、心を整える機会になった」と告白。「たくさんの方々に厳しい教えもいただきながら、ここまで進んでこられた。もちろんそれを大切にしながらも、これからはもっと、自分のやりたいこと、自分の声にも耳を傾けていきたいと思っています。年齢を重ねていくうえで、自分の体のことも大切にしていきたい」と今後のテーマができた。
「やぎら本」の発売を記念したイベントでは、オンラインでファンとつながり、「応援してくださっている方々と、輪を作れたような気がしていて。やっぱりこういう方々に支えられているんだなと思いましたし、ファンの皆さんが僕を楽しんで見てくださっているんだなと感じることもできた。ここまで時間はかかりましたが、時間をかけてやってきて本当によかった」と喜びを噛み締める。
「改めて、僕はこの仕事が大好きなんだなと思った」と意欲をみなぎらせるが、2021年は『HOKUSAI』だけでなく、日本、モンゴル、フランスの3か国による合作映画『ターコイズの空の下で』、スーパー塾講師を演じるドラマ「二月の勝者-絶対合格の教室-」のほか、大泉洋とのW主演で、ビートたけし原作、劇団ひとりが監督を務めるNetflix映画『浅草キッド』も予定されている。「10代の自分には負けたくない。世界三大映画祭の制覇だって、狙っていきます!」と力強く意気込み、「僕は、なぜかトリッキーな役のオファーをいただくことが多くて。30代は恋愛映画にも挑戦してみたいですね」と笑顔で語る。柳楽の芝居に思わず目を奪われてしまうのはきっと、彼自身がもがきながら手にしてきた“生きる力”や“前を向く力”が映しだされているから。これからの活躍も楽しみで仕方ない。
取材・文/成田 おり枝