アメリカの政治映画はなぜおもしろい?「役職」でアメリカ選挙活動を紐解く映画・ドラマ21選

コラム

アメリカの政治映画はなぜおもしろい?「役職」でアメリカ選挙活動を紐解く映画・ドラマ21選

選挙活動の裏側がわかる「候補者」や「選挙参謀」視点の作品

Netflixのドキュメンタリー『レボリューション -米国議会に挑んだ女性たち-』
Netflixのドキュメンタリー『レボリューション -米国議会に挑んだ女性たち-』

アメリカの議会は上院(Senate、定数100)と下院(House of Representative、定数435)の二院制で、2年ごとに上院の3分の1、下院の全議席が改選される。Netflixのドキュメンタリー『レボリューション -米国議会に挑んだ女性たち-』(19)は、2018年の選挙で女性史上最年少の下院議員となったアレクサンドリア・オカシオ=コルテス議員ら、女性候補者の選挙戦を追う。なお、マイケル・ムーアが2018年に発表した『華氏119』にも、2016年大統領選の民主党候補の一角だったバーニー・サンダースのほか、オカシオ=コルテスも登場している。

フロントランナー(最有力候補)と呼ばれていた政治家の失脚を描く『フロントランナー』
フロントランナー(最有力候補)と呼ばれていた政治家の失脚を描く『フロントランナー』写真:SPLASH/アフロ

ヒュー・ジャックマンが1988年の大統領選の民主党候補だったゲイリー・ハートを演じる『フロントランナー』(18)は、フロントランナー(最有力候補)と呼ばれていた政治家が、女性スキャンダルによって失脚していく様を描く。選挙には“選挙参謀”がつきもの。選挙参謀とは、選挙を勝ち抜くための戦術を企画立案する、いわば“選挙のプロ”だ。『フロントランナー』ではJ.K.シモンズが、『スーパー・チューズデー 正義を売った日』(11)ではライアン・ゴズリングがその役を演じている。『スーパー・チューズデー』の原作、脚色は、自身も2004年の民主党大統領予備選挙で選挙参謀を務めていた、ボー・ウィリモン(『ハウス・オブ・カード 野望の階段』脚本)。

選挙コンサルティング会社を追ったドキュメンタリー『グレート・ハック: SNS史上最悪のスキャンダル』
選挙コンサルティング会社を追ったドキュメンタリー『グレート・ハック: SNS史上最悪のスキャンダル』

昨今もっとも有名になった選挙参謀には、2016年の大統領選でトランプ大統領を劇的勝利に導いたスティーブ・バノンがいる。バノン氏はトランプ政権発足後に大統領上級顧問および首席戦略官に起用されたが、約7か月で自ら辞任。そのバノン氏は、2016年のイギリスのEU離脱(いわゆるBrexit)や大統領選にSNSを使い影響を及ぼしたとされる選挙コンサルティング会社、ケンリッジ・アナリティカの役員を務めていた。同社の手法や効果を追ったドキュメンタリーが、『グレート・ハック: SNS史上最悪のスキャンダル』(19)である。これを観ると、現代の選挙戦がいかに“作られたもの”であるのかがわかる。

『俺たちスーパー・ポリティシャイン めざせ下院議員!』のプロモーションを行うウィル・フェレルとザック・ガリフィアナキス
『俺たちスーパー・ポリティシャイン めざせ下院議員!』のプロモーションを行うウィル・フェレルとザック・ガリフィアナキス写真:SPLASH/アフロ

これらのドラマやドキュメンタリーのほかにも、選挙や政治を題材にしたコメディ・エンターテインメント作品もある。例えば、ウィル・フェレルがノースカロライナ州選出の現職民主党下院議員、ザック・ガリフィアナキスが対抗する共和党下院議員候補を演じる『俺たちスーパー・ポリティシャイン めざせ下院議員!』(12)。舞台は、2020年の大統領選でも激戦州として注目を集めたノースカロライナ州。アメリカをNo.1と信じて疑わない男と、マニフェストではなく相手の悪口で選挙戦を戦おうとする男による史上最悪の選挙戦は、いま観ると既視感ばかりで恐ろしくなる。この映画の4年後、それが現実になろうとは…。コメディながら選挙戦の滑稽さがうまく表現されているのは、脚本と製作を『バイス』のアダム・マッケイが務めているから。

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