挫折からの再起、仲間との絆…『すばらしき世界』に通じる心温まる映画たち
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』を思わせる挫折からの再起
『すばらしき世界』で物語の中心となってくるのが、挫折からの人生の再チャレンジ。そういう意味では、レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットが共演したクエンティン・タランティーノ監督作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(19)も忘れてはいけない。
本作は、1960年代後半のハリウッド黄金期を、落ち目の俳優とその専属スタントマンの友情を通して描いたもの。ディカプリオ演じるリックは、かつては西部劇のテレビスターとして名を馳せたものの、変化し続けるハリウッドの時流に押し流され、悪役や単発企画へのゲスト出演に甘んじている。しかし、彼は人気俳優のプライドを捨て、質が悪いと敬遠していたイタリア西部劇、つまりマカロニウエスタンに活路を見いだしたことで、イタリア国内で出演作が軒並みヒットする成功を収めることになる。
社会復帰を目指す三上にも様々な挫折が訪れる。10代のころから暴力団に加わり、そこに居心地の良さを感じていた彼は、何度も服役と出所を繰り返していた。しかし、その負の連鎖を断ち切り、“普通”の生き方を模索しようとする。頭に血が上りやすく、理不尽なことがあれば声を荒げ、時には暴力も辞さないなどトラブルは絶えない。それでも少しずつ耐えることを学び、発想の転換で介護福祉士の職を手にした際には、「まだ自分を必要としてくれる場所がある」と喜びと希望に満ちた表情を見せてくれる。
人とのつながりの大切さを実感させられる『サニー 永遠の仲間たち』との親和性
三上が一人で生きていけるように、手を差し伸べる人たちが登場する本作。人と人とのつながりの大切さを実感させられ、その点では韓国の感動作『サニー 永遠の仲間たち』(11)との親和性も。
日本でも篠原涼子や広瀬すずの共演でリメイクされたこの作品。主人公は夫や娘に恵まれ、慌ただしいながらも幸せな生活を送っている主婦、イム・ナミ(ユ・ホジョン)で、母の入院先の病院で高校時代の友人、ハ・チュナ(チン・ヒギョン)と再会するところから物語は始まる。チュナはガンに冒され、余命2か月を宣告されており、ナミは彼女の最後の願いを叶えるため、高校時代の仲良しグループ「サニー」のメンバーを集めようとする。メンバー捜しの過程で、ナミのなかに仲間との様々な思い出がよみがえり、失われていた輝きを取り戻していく。
『すばらしき世界』では、身寄りがなく孤独な三上にとっての“仲間”の役割を津乃田や弁護士夫妻たちが担い、職探しのほか、新居への引っ越しや当面の暮らしを支えるため生活保護の申請にも助力。彼ら以外にも、職務に忠実なケースワーカー(北村有起哉)や、三上を万引き犯と間違えたことから奇妙な友情が芽生えるスーパーマーケットの店長(六角精児)も登場し、力になろうとする姿が印象的だ。なにより、自身を気にかけてくれる存在がいることで、三上は「一人じゃない」と感じることができ、前向きに生きるパワーになっているのだ。
様々な社会のルールに縛られ、生きづらいこの世の中。三上のように挫折し、苦悩している人も多いはず。主人公が元殺人犯という設定は特殊だが、本作で描かれているのは、誰もが共感できる普遍的なメッセージ。『すばらしき世界』や今回ピックアップした作品を観れば、明日を生きる活力がもらえるはずだ。
文/平尾嘉浩
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