『ヤクザと家族 The Family』で提示した、綾野剛と舘ひろしの“役者”としての生き方
「あの目を持った綾野くんには可能性がまだいっぱいある」(舘)
綾野「僕はまだ、舘さんのように佇まいだけでは勝負できないから、今回はヤクザであるということよりも、“親父が好きだ!”“惚れた男について行きたい!”ということだけに特化していたような気がします。“俺はヤクザ”という意識を本当の意味で持ったのは出所後のシーンからだったと思います。僕が唯一、山本という役に感謝しているのは目が一度も死ななかったことです。それを貫けたのは、やっぱり惚れた人に『何て顔をしてるんだ?』と言われたくない単純な男の生理で、それは自分の性格にもすごく合っていました。僕自身、舘さんと今回初めてお会いして、役者然としていた自分の感覚を完全にひっくり返されました」
舘「そんなことないでしょ(笑)」
綾野「自分は舘さんのようなスターではないとどこかで分かっているから、芝居の鍛錬を積むことに全力を注いできました。今回の現場では芝居から離れた綾野剛もちゃんと共存していたんです。お会いするだけで自分が舘さんに惚れているのが分かると言うか、血流がよくなったんですよね」
舘「綾野くんは、台本に書いてあることを自分の実体験にしちゃう。物語を自分の身体の中に取り込む能力がある。そこがスゴいよね」
綾野「お言葉うれしいです。的をパンって抜かれたみたいで、いま、すごく心地好いです」
――舘さんが俳優の先輩として、綾野さんに今後期待されることは?
舘「さっき話したあの素晴らしい目を持った綾野くんは怖いものなしという感じがするし、可能性はいっぱいあると思う。何でもできちゃうような気もするから、いろんなことに挑戦した方がいいんじゃないかな。僕も昔、『パパとムスメの7日間』というドラマの話が来た時に、高校2年生の娘と入れ替わっちゃうとんでもない役をやる勇気がたまたまあって。それをやり遂げた自信が、その後の僕をずっと支えてくれているところがあるからね」
綾野「僕もそのドラマを観た時はビックリしたけれど、いまの舘さんの言葉で、偏らず、いろんなタイプの役や作品をやってきた自分のこれまでの仕事が肯定されたようです。また、みんなが“こんなのやるの?”って驚くようなことをすぐにやりたいという気持ちになりましたし、舘さんとまたご一緒したいです」
取材・文/イソガイマサト