「足がすくむ恐怖、風化させてはいけない」震災から10年、『Fukushima 50』に寄せられた“未来”への想い
2011年3月11日午後2時46分に発生した、宮城県沖を震源とするマグニチュード9.0、最大震度7の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)。あれから丸10年を迎えた今日、各地で追悼式が執り行われた。先日警察庁が発表した3月1日現在の被害状況によると、死者1万5899名、行方不明者2526名。10年経ったいまも強い余震が発生するなか、多くの人々が復興に向けて取り組みつづけている。
東日本大震災に関連した多くの痛ましい出来事のなかでも、特に忘れがたいものの一つが、福島第一原子力発電所で発生した原発事故だ。その関係者90人以上への取材をもとに綴られた、門田隆将のノンフィクション作品「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発」を原作にした『Fukushima 50(フクシマフィフティ)』が、現在全国の劇場で再上映されており、明日12日(金)には日本テレビ系列「金曜ロードSHOW!」にて、本編ノーカットで地上波初放送される。
『ホワイトアウト』(00)や『沈まぬ太陽』(09)で知られる若松節朗監督がメガホンをとった本作は、想像を超える被害をもたらした原発事故の現場に残り、愛する家族と日本を守るために死を覚悟して立ち向かった、地元福島県出身の作業員たちの姿を描いた物語。第44回日本アカデミー賞では優秀作品賞や優秀監督賞をはじめ、最多12部門で優秀賞を受賞。また岩代太郎が作曲を手がけた本作の劇中音楽は、米アカデミー賞の前哨戦のひとつである国際映画音楽批評家協会賞でオリジナル作曲賞(ドラマ映画部門)を受賞する快挙を成し遂げた。
劇場公開時には、30名以上の著名人からメッセージが寄せられた。音楽家の坂本龍一からは「2011年3月のことを、フクシマのことを、僕らは忘れてはいけない」という力強いメッセージが。脳科学者の茂木健一郎は「現場で踏ん張った『人』たちの勇気を、この傑作群像映画で永久に後世に伝えたい」と語り、福島第一原発で作業員として従事した経歴を持つ漫画家の竜田一人は「その場に立ち会っているかのような臨場感」と本作のリアリティに太鼓判を捺した。
また、公開に合わせて特設されたスペシャルサイト「あなたの声を聞かせてください『#フクシマフィフティと311』」でも、世代を問わず多くの人々から本作への想いを綴ったコメントが寄せられていた。本稿ではそのなかからいくつかピックアップしながら、改めて本作の魅力に触れていきたい。