“ゴジラ愛”あふれる笠井信輔アナ、『ゴジラvsコング』でハリウッド映画デビュー!「アナウンサー生命を懸けてきたご褒美」
「アフレコをする前の役作りは、悩んだ末にやめました」
しかも、いただいた役がモナーク(世界各国の怪獣の研究、調査をしている国際機関)の指揮官のギラーミンです。いや、(今作で芹沢博士の息子、芹沢蓮を演じた)小栗旬くんを食うような大きな役じゃないですよ。にもかかわらず、本国から届いたキャラクター表にはとても大きく出ていたので、なんでだろう?と思って訊いたら、ギラーミンは1976年版の『キングコング』を撮ったジョン・ギラーミン監督からとった、アダム・ウィンガード監督の思い入れが詰まった名前だったんです。そんな大切な役を僕にオファーしてくださったわけですから、やっぱり見ている人は見ているんだなと思いました(笑)。
ただ、アフレコを実際にやる時には、とても悩ましい出来事がありました。役作りのために、『ゴジラvsコング』の本編映像をお借りできたので、それを観始めたんですよ。…2分でやめました。ものすごく画質が悪いんです。流出しないように、ダウンコンバートしてあったんですね。しかも、画面の全面に「コピーするな!」という警告の文字も入っている。だから、「俺はこの映像でゴジラとコングの戦いを観るのか?それはあまりにも辛すぎる!」と思って、役作りは捨てました。
まあ、スタジオに入って映像を観れば、なんとかできるだろうと思ってもいて。実際、最初にセリフを言った時も自分では上手くやれたような気がしたんです。ところが、そこから日本語吹替版の監督さんから「じゃあ、役を作っていきましょう」と言われて、「ギラーミンはモナークの指揮官だけど、政治家のような動きもしている」といった映画では描かれてない情報や細かい指示がどんどん飛んできたんですよ。
アニメのアフレコはやったことがあるんですが、吹替えはアニメより難しいと思いましたね。アニメはキャラクターに命を吹き込んでいくものですが、実写の場合はすでに命が吹き込まれている人間に新たに命を吹き込んでいくことになるから、本当に大変で。それこそ僕は、「ゴジラが来た~!」って襲われている雰囲気を出したんだけど、監督はから「このシーンでは、襲われている雰囲気はいらない。モナークの指揮官だから、もっと落ち着いているんです」と言われて。自分の役作りの浅さを痛感しました(笑)。
「『ゴジラvsコング』はIMAX3Dや4DXで観るべき」
先ほど試写室で本編を拝見しましたが、実は観たことを後悔しているんです…。ゴジラとコングのバトルを観るに相応しいのは、試写室のスクリーンサイズじゃなかった。だってスゴいんだもの!
いや、これはIMAXかIMAX3D、あるいは4DXで観るべき映画ですよ。僕はIMAX3Dと4DXであと2回は観ますね。これで観た気になっちゃいかん、語っちゃいかんと思ったし、観た直後なのに、IMAX3Dや4DXで観たらどんな迫力になるんだろう?っていまからワクワクしています。
ゴジラに代表される怪獣映画の肝は、ある種の完成された芸術であり様式美だと考えています。『GODZILLAゴジラ』はそこを忠実に再現してくれたから、ギャレス・エドワーズ監督は我々の心を分かっているなという喜びがありました。でも、ゴジラ映画には「バトル」というもうひとつのカテゴリーがあるわけです。『モスラ対ゴジラ』(64)から始まった対決モノですね。そのエッセンスをハリウッドが取り入れた、「モンスターバース」シリーズの一つの答えが『ゴジラvsコング』にはあると思いました。
キーワードは「キング」です。今回のタイトルからキングコングの「キング」が抜けているのにも意味があって、「王者は誰なのか?」を描いている。しかも、ゴジラとコングの対決だけでなく、これまでのゴジラ映画と同じように、そこに人類も大きく関わってくる。その三つ巴の戦いを存分に堪能させてもらいました。
物語はかなりかっ飛ばしているんですよ(笑)。物語に細かい説明がない代わりに、「バトルはすごいお金をかけて見せますよ!」というハリウッドの思いきりのよさに痺れました。だから、ちゃんと映画館に行って、大画面と大音響でゴジラとコングの闘いを観てもらいたいですね。
僕自身は、早くも次回作に期待しています。「モンスターバース」シリーズはこれで終わりだなんて誰も言ってないし、ギラーミンは壮絶な香港決戦の生き残りとして次作に登場すると踏んでいるんです。私もいまから、オファーに備えておきます(笑)。
取材・文/イソガイマサト