『砕け散るところを見せてあげる』SABUと「ゴールデンタイム」今千秋が監督対談!竹宮ゆゆこ作品の魅力を語り尽くす

インタビュー

『砕け散るところを見せてあげる』SABUと「ゴールデンタイム」今千秋が監督対談!竹宮ゆゆこ作品の魅力を語り尽くす

『弾丸ランナー』(96)で映画監督デビューして以来、精力的に作品を発表し続け、ベルリン国際映画祭やモスクワ国際映画祭といった海外の映画祭でも高く評価される監督、SABU。テレビアニメ「のだめカンタービレ」や『劇場版「美少女戦士セーラームーンEternal」』前後編(20~21)ほか、数々の話題作を手がけるアニメーション監督の今千秋。
このたび、SABU監督の最新作で、「とらドラ!」などの人気作で知られる竹宮ゆゆこのベストセラー小説を自らの脚本で映画化した『砕け散るところを見せてあげる』(公開中)にあわせ、SABU監督×今千秋監督による特別対談が実現した。

平凡な高校生だが、正義感の強い清澄を演じるのは中川大志
平凡な高校生だが、正義感の強い清澄を演じるのは中川大志[c]2020 映画「砕け散るところを見せてあげる」製作委員会

本作は、平凡な日々を送る高校生の清澄と、彼にいじめから救われた女子生徒、玻璃。少しずつ心の距離を縮めていく2人に、想像を絶する“危険”が迫る物語。ボーイミーツガールのストーリーが、やがて壮絶なサスペンススリラーに豹変し、ラストには世代を超えた壮大な愛の物語へ昇華する話題作だ。

キャストには、主人公の清澄に中川大志、ヒロインの玻璃に石井杏奈、共演に北村匠海、井之脇海、清原果耶、松井愛莉など若き演技派たちと、堤真一、原田知世、矢田亜希子、木野花といった豪華俳優陣が集結した。

“学年一の嫌われ者”と呼ばれる孤独な少女、玻璃を演じた石井杏奈
“学年一の嫌われ者”と呼ばれる孤独な少女、玻璃を演じた石井杏奈[c]2020 映画「砕け散るところを見せてあげる」製作委員会

実写のSABU監督とアニメの今監督、一見、つながりのないように映るかもしれないが、今監督は、かつて竹宮原作のテレビアニメ「ゴールデンタイム」を制作している。ともに竹宮作品を監督した者同士の2人。コロナ禍によりリモート形式の対談となったが、竹宮作品を映像化するうえでのこだわりや、『砕け散るところを見せてあげる』の制作秘話など、おおいに語り合ってくれた。

※本記事は作品後半の展開に関する記述を含みますので、未見の方はご注意ください。

「本当は、玻璃が片目を失ったという設定にしようと思っていたんです」(SABU)

ベルリン国際映画祭、モスクワ国際映画祭など、海外の映画祭でも高く評価されてきたSABU監督
ベルリン国際映画祭、モスクワ国際映画祭など、海外の映画祭でも高く評価されてきたSABU監督


今千秋(以下、今)「SABU監督、はじめまして!今です」

SABU「はじめまして、SABUと申します」

今「このお話をいただいた時から、緊張しまくってドキドキしています」

SABU「そんな、そんな(笑)」

今「『砕け散るところを見せてあげる』、すごく良かったです!とにかくビックリしました。中盤までは、青春ラブストーリーだと思って観ていたんですが、堤真一さん演じる玻璃のお父さんが登場した途端、怖い怖い~!となりました。そこから想像もしなかった展開になり、自分の感情がコントロールできなくなりました。スピード感がたまらなかったです。あんなふうにゴルフクラブでスイングされたら、私なら即死してますよ!あ…すみません、一気にクライマックスのシーンの話をしてしまって」

SABU「ハハハ。僕は撮影に入る前に、全シーン、全カットの絵コンテを描くんですけど、ゴルフクラブという設定はもともと原作にもありました。絵コンテ(でゴルフクラブ)を描いていくと、ついついスイングしたくなってくるんですよ」

今「もうっ、残酷!」

SABU「コメディ寄りにならないか、すごく迷ったんですけど」

今「とてつもない狂気でした!容赦ないです、お父さん」

堤真一が怪演する狂気的な父親に今監督も戦々恐々…
堤真一が怪演する狂気的な父親に今監督も戦々恐々…[c]2020 映画「砕け散るところを見せてあげる」製作委員会

SABU「堤真一さんに演じてもらったので、当たり前の方向にいかなくて良かったです。あと、玻璃が父親にゴルフクラブで殴られた後日、目に眼帯をしているシーンがあるんですね。本当は、そこから玻璃が片目を失ったという設定にしようと思っていたんです。そして出産のシーンで、失明しているほうの目にUFOが映って、涙がこぼれる…という。でも、それはさすがに怒られるかなと思って、我慢したんですけど。やっておけばよかったなって、いまになってちょっと思っています」

今「でも、裏設定としてはアリですよね。うわ…想像したら、すごい鳥肌が立ちました」

SABU「今回は原作ものなので、自分が出すぎるのも良くないなと。それでなくても、ちょっと怖い作品なので」

今「なかなか監督も容赦ないですね。竹宮ゆゆこ先生の作品って、いつもせつなさが半端なものではなかったり、残酷なところが要所要所にあったりするんですけど。そこに、SABU監督の残酷さがプラスされたわけですね…イイですねぇ」

SABU「でも、怒られてます(笑)。日本映画は特に、結構うるさいですからね」

今「それは守りに入るという…」

SABU「そうです」

今「あんなにゴルフクラブでボコボコなのに…」

SABU「実際に、完成した映画の試写を観たあとで、(予定していた)配給先が『これはちょっと…やめます』って、手を引いちゃったんですよ。最初はキャストを見た配給会社が『やりたい!』と言って、決定していたのに。その後も配給がなかなか決まらなかったんです。これだけのキャストで、わりと質の高い映画ができたつもりでいたんですけど…。腰抜けばっかりです(笑)」

今「そういうご時世なんですね…。サスペンス、という枠でも厳しいんでしょうか?」

SABU「そうですね。この規模で上映するには、厳しいかもしれないです。単館系だったら、まだ可能かもしれません。どちらかと言うと、僕もそちらをメインに作品を作ってきたので。でも、最近は多くの人がNetflixなどの動画配信サービスで、(過激な表現を含む)色々な作品を観るようになってきているし、韓国映画もハードなシーンが結構ありますからね。しかも、そこがおもしろいというふうに、どんどんなっているみたいです。そういう意味では、本作がいいきっかけの映画になればと思います」

顔に痛々しいアザをつくった玻璃
顔に痛々しいアザをつくった玻璃[c]2020 映画「砕け散るところを見せてあげる」製作委員会

衝撃作に込められたメッセージを読み解く…『砕け散るところを見せてあげる』特集
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