『砕け散るところを見せてあげる』SABUと「ゴールデンタイム」今千秋が監督対談!竹宮ゆゆこ作品の魅力を語り尽くす
「ゆゆこ先生の作品では、常に主人公が走っていますね」(今)
今「SABU監督が今回の映画化にあたって、大切にしたポイントはなんですか?」
SABU「やっぱり原作があるので、原作にちゃんと忠実に撮ろうと思っていました。できるだけ原作の言葉もきっちり入れたかったので、わりと台詞が多い映画になっています。なのに、清澄役の中川大志くんも、玻璃役の石井杏奈さんも、撮影できる日数がかなり限られていました。だから毎日、通常では考えられない分量のページ数を撮影していましたね。例えば、清澄と玻璃が話しながら夜の商店街の通りを歩いていると、2人の頭上にUFOが浮かんでいる前半のシーンと、清澄と玻璃が夜に自転車の2人乗りをしている後半のシーンは同じ日に撮っています。中川くんも石井さんも、すごい量の台詞が完全に入っていたので、本当に助けられました」
今「ご自身で特に気に入っているシーンは?」
SABU「最後の最後、清澄と真っ赤な嵐がヒーローに変身するポーズを決めるところ。あそこに向かっていくあたりがすごく好きです。あの展開の早さとか。濁流の水中のシーンにもこだわりました。原作を読んだ時に一番好きだったのは、清澄が商店街で変身ポーズをするシーンですね。すごくせつなくて、いいなと思っていました」
今「男のロマンですか?」
SABU「そうなんですかね(笑)。あと、映像的には、オープニングで清澄が登場する、階段を駆け上がってくるところ。あのシーンの質感は大好きです。ここは望遠レンズを使って撮っています。絵コンテではなかなかイメージできなかったのですが、実際に見てみると、すごくかっこよかったです。まあ、遅刻(のシーン)なんですけどね(笑)」
今「ちなみに私が作っていた竹宮ゆゆこ先生原作の『ゴールデンタイム』という作品でも、1話で主人公が『遅刻遅刻~』って言いながら走ってくるシーンから始まります。ゆゆこ先生の作品では、常に主人公が走っていますね(笑)」
SABU「主人公が遅刻するシチュエーションって、アニメだと多いじゃないですか。髪の毛は寝グセがついたままで、食パンかじりながら走っていたりして、主人公のちょっと鈍くさい部分をアピールするというか…。そういうよくあるパターンかと思わせておいて、その予想からどんどん変わっていく。そこがすごくおもしろいなと思いました」
今「本当に、展開がぐるんと変わりますね」
「原作のリズムを壊さないように、台詞をできるだけそのまま拾っていきました」(SABU)
今「映画を観たあと、原作ではどうなっているんだろう?と思って、すぐに原作をゲットしました。もう夕ご飯を食べながら、一気に読むくらいの勢いで」
SABU「読みながら、頭のなかに映像がどんどん浮かんでくるような小説でしたね。台詞もすごく生きている」
今「映画では、竹宮作品の特徴である“ゆゆこ節”が、劇中にうまく表現されているなと思いました。ボケとツッコミみたいなテンポ感がよくて。ゆゆこ節では、一見関係がないように見える会話が多いですよね。例えば、ガードレールに腰かけた清澄の『尻の割れ目に対して(ガードレールが)直角、クロスだから大丈夫』という台詞からの玻璃とのやり取りとか。本当に言いたいことを、ちょっとごまかすように寄り道した会話をする。そのあたりも映画ですごく繊細に描かれていて、キュンキュンしました」
SABU「原作のリズムを壊さないように、原作の台詞をできるだけそのまま拾っていきました。中川くんも石井さんも、自分のペースで勝手に芝居をするタイプではなく、それぞれちゃんと相手の台詞を聞いて、それにちゃんと応えている。そういうところも生かせるように、できるだけワンカットで撮るようにしていました」
今「キャストのみなさん、ほんとハマり役だなと思いました。私は個人的に松井愛莉さん演じる尾崎・姉がかわいくて好きです。どんな演出をされたんですか?」
SABU「主演の2人に関しては、最初に台本読みをしてもらって。これはイケる!と思ったので、特別、なにも言わなかったです。現場では、中川くんとはわりと話したんですけど、石井さんは玻璃のキャラクターに入り込んでいて、常に頭のなかで玻璃の台詞をしゃべっているような空気だったので、気軽に近寄れなかったくらい(笑)。
尾崎姉妹とは、簡単なリハーサルをしました。姉役の松井愛莉さんは笑顔が魅力的な方なんですけど、『この役では笑顔を完全に封印してください』とお願いしたら、すごく良い笑顔で『ハイ!』と言ってくれました(笑)。そして、最後の卒業式のシーンを撮った時に、『ここは笑ってもいいんですか?』と聞かれて。ちょっとだけ…と言ったら、かすかに笑っていましたけど(笑)。でもそこが良くて、ニコニコしないんだけど、すごく信用できるキャラクターになったなと思います。
妹の方は結構難しくて。ちょっと抜けているようだけど、すごく純粋で、人の気持ちがちゃんとわかる、そういうキャラにしたかったんです。だから、『お姉ちゃん、私、バカかな?』と言って泣くシーンは、すごくこだわって、何度もリハーサルをしました。妹役の清原果耶さんからも、いろんな意見がたくさん出て。一緒に積み上げて作った感じです」
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