『砕け散るところを見せてあげる』SABUと「ゴールデンタイム」今千秋が監督対談!竹宮ゆゆこ作品の魅力を語り尽くす
「やっぱり、清澄と玻璃の2人で終わりたかった」(SABU)
SABU「映画『砕け散るところを見せてあげる』も原作に忠実に作ったのですが、ラストシーンは、僕のオリジナルなんですよ」
今「あ!一番、私がお聞きしたかったところです!ラストに、原作にはなかった玻璃目線の回想シーンを入れたのはなぜですか?」
SABU「やっぱり、清澄と玻璃の2人で終わりたくて、撮影中もずっととラストシーンについて考えていて。清澄が座っていたガードレールに自分でも座ってみたりして、それで、そういえば原作には玻璃目線がなかったなと思って。玻璃が髪をふわっとさせて、一番ドキドキしていた時の…」
今「乙女でしたよね」
SABU「うん、僕、結構乙女なんですよね」
今「いやいや、SABU監督のことじゃないです(笑)。あの、玻璃ちゃんが清澄に対して乙女だったなと」
SABU「そうですね(笑)。そういう玻璃がすごく見たいと思って」
今「すっごく感動しました!映画を何度も繰り返し観させていただいたんですけど。いろんなことを理解した上で、あのラストシーンを観ると、もうほんとホロッときちゃう」
SABU「そうですね」
今「ずるい…ずるいです!」
SABU「あれをひらめいた時、これだ!と思いました。石井さんにも聞いてみたら、彼女もすごく喜んでいて」
「読者も、キャラクターたちも、せつなさや重たいテーマに立ち向かって生きていく…」(今)
今「あと、SABU監督にUFOの映像の制作過程について解説を聞きたかったんです」
SABU「UFOの映像は何パターンも作りました。最初は普通のUFOだったので、それではおもしろくないんです、と言って、悪いものが集まったような黒いゴツゴツした塊のような表現にしてもらったら、いまいち馴染みが悪くて…。次は、ネガティブなイメージのある、いろんな漢字がグニャグニャになって、雲の中から出てきているような形のUFOを作ってもらったんですけど、それもアートっぽすぎて…。それで、ある時、タバコを吸いながらキッチンの椅子に座っていたら、フライパンの黒く焦げた底のテカリとボコボコ感を見て、おっと思って。写真を撮って、『こんな感じで』と作ってもらったんですけど、どこから見ても、フライパンにしか見えないんですよ」
今「言われなきゃわからない(笑)」
SABU「ぐるっと一周回って、結局、普通といえば普通のUFOに落ち着きました」
今「なるほど。劇中ではUFOは観念的なメタファーとして表現されていますが、あれはつまり、玻璃の孤独、ということで合っていますか?」
SABU「だと思います。ただ、実際はたぶん、玻璃もいろんな後悔があったでしょうし、それを全部ひっくるめてハッピーエンドに持っていける竹宮さんはさすがですね。社会的な問題を描きながら、ちゃんと深いラブストーリーとして運んでいるところが巧いなと。こちらの予想をちゃんと壊してくれる。その“振れ幅”こそが、竹宮作品の魅力だなと思います」
今「ゆゆこ先生の作品は、とにかく容赦なくせつないんですよね。そして、そのせつなさを超えた時に、今度はそこから残酷になったりする。常に重たいテーマがどっしりと構えているんですけど、読者も、劇中のキャラクターたちも、せつなさや重たいテーマに立ち向かって生きていく…その先に、たぶん、真っ直ぐな正しい答えがあるのかなと思いました」
SABU「先ほどの孤独もそうですが、誰しもが、あの時、ああしなければ良かった、という後悔とか、いろんなものを抱えながら生きていて。それが日々、頭のなかでどんどん大きくなっていくことってあると思うんです」
今「ありますねえ…」
SABU「それもUFOといえば、その人のUFOなのかな、という気がします」
今「なるほど!いま、すべてを理解しました。私の上にもいっぱいUFOが浮いていますが、がんばって撃ち落します!良いお話をたくさん聞けました。今日は貴重な機会を本当にありがとうございました」
SABU「いや、こちらこそ。楽しかったです!」
取材・文/石塚圭子
衝撃作に込められたメッセージを読み解く…『砕け散るところを見せてあげる』特集
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