映画館への休業要請に、全興連会長が抱く怒りと歯がゆさ「『過ちては改むるに憚ることなかれ』と都知事に言いたい」
「休業するかしないかは、映画が好きとか好きじゃないという次元の話ではない」
「これは私個人の見解ですが、エンタテインメントという社会の公器を担う業界として、感染状況が厳しい時に社会のために協力することは当然の責務だと思っています。でもそれに対する科学的な根拠もなければ相応の補償もない。だからだれも協力しないし、できない。もっと国民を信用して、データをきちんと出したうえで協力してほしいと言えばもっと多くの国民が協力すると思います。
全興連は映画館だけの組合ではなく、演芸場も含まれています。先日ニュースで都内の演芸場が寄席を続行するという決断をした話が大きく取り上げられていましたが、そもそも演芸場に対して休業要請は出ていないんです。無観客を要請するという施設に演芸場は含まれていて、それはつまり休業補償が出ないということでもあります。しかも、それで要請を守らないのはとんでもないと大臣が発言することによって、我々の仲間がいわれのない批判を受ける。マスコミも政府の発表を垂れ流しているだけで、咀嚼して伝えてくれていない点に歯がゆさが残ります。
社会全体のことに協力するのは、どんな業界でも避けられないことです。休業するかしないかは、映画が好きとか好きじゃないという次元の話ではない。今回は異なりますが、基本的に映画館へは営業時間の制限等は法に基づかない協力依頼で行われてきました。それを求めるならば法に基づいたうえできちんと補償をしろと。今回は東京都でも協力依頼に対しても協力金が出ることになりましたが、知事が言いたいことを言うだけで国や都の要請に従わないのはとんでもないと言う空気を醸成して我々を痛めつけていくだけでは、業界の維持もできなくなってしまいます」
「『過ちては改むるに憚ることなかれ』と都知事に言いたい」
政府は5月7日、緊急事態宣言の措置を5月31日まで延長することを決定した。それと同時に、大型商業施設に対する休業要請の緩和を発表。ところが東京都では“独自の政策”として、大阪府でも医療現場が逼迫している状況を理由に休業要請の継続を決めた。こうして大都市圏の映画館の多くが引き続き休業を余儀なくされる事態となり、多くの作品が公開延期に踏み切らざるを得ない状況になるなど、その影響は延長前より甚大なものとなっている。
追加取材の場で佐々木会長は、刻一刻と、また二転三転する状況について強い怒りをにじませる。全興連では5月11日に、「映画を愛する皆様へ」という声明文を公開。各映画館が講じる感染予防対策を順守する人々への感謝を伝えると共に、映画業界全体が再び苦境に立たされることになったことへの想いを述べている。
「声明文のなかでも触れている通り、内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室から各都道府県知事に宛てられた事務連絡では、映画館は劇場などと同様に人数上限や収容率の要請対象であって、休業要請の対象ではない。東京都の担当者に何度もこのことを質問させてもらいましたが、『人流を抑えるための総合的な判断です』としか回答をいただけていません。人の人生を左右する措置にもかかわらず、合理的な説明が一切なされないことはあまりにも遺憾です」。
こうした行政の曖昧な対応に対しては、市民の間でも疑問の声が強くあがっている。現在Twitter上では「#映画館への休業要請に抗議します」や「#SaveTheCinema」のハッシュタグや、映画・演劇・音楽・美術を包括した「#WeNeedCulture」や「#文化芸術は生きるために必要だ」といった文化全体を守ろうとする運動が活発化することに。
佐々木会長は「小池都知事に言いたいことは、『過ちては改むるに憚ることなかれ』に尽きます。もちろん感染拡大防止に最大限の協力を行なうことには一点の疑問もありません。ただ、合理的かつ公平なご説明をいただきたい。それが行政の責務ではないでしょうか」と改めて苦言を呈した。