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“映画館と配信の共存”へ新たな一歩!米映画館チェーンがメジャー4社と配信条件の契約に合意

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“映画館と配信の共存”へ新たな一歩!米映画館チェーンがメジャー4社と配信条件の契約に合意

北米第3位の映画館チェーンであるCinemarkが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う映画館の休業によって急速に普及した新作映画のPVOD配信について、4つのメジャースタジオと新たな条件で契約を交わしたことを明らかにした。「Bloomberg」などが報じている。

北米の映画館チェーンNo.3のCinemarkは、複数のメジャースタジオと新たな契約を締結
北米の映画館チェーンNo.3のCinemarkは、複数のメジャースタジオと新たな契約を締結画像はCinemark Theaters(@cinemark)公式Instagramのスクリーンショット

報道によると、Cinemarkはワーナー・ブラザースとウォルト・ディズニー・カンパニー、パラマウント・ピクチャーズ、ソニー・ピクチャーズの4社と契約を合意。その内容についての詳細は明らかにされていないが、昨年11月にユニバーサル・ピクチャーズと合意に達した、劇場公開から17日後の配信リリースに関する契約と同様のものとみられており、Cinemark側は「各スタジオには固有の特徴があり、相互の利益になる条件である」とコメントしている。

こうした契約の背景には、劇場公開から配信リリースなどのホームエンタテインメントでの二次使用まで一定の期間を設けることで、映画館側の利益を保護するという「シアトリカル・ウィンドウ」という課題がある。数年前より、約3か月と定められた期間を短縮するよう求める声がスタジオ側からあがっていた。


【写真を見る】パンデミックで急加速した“映画館と配信の共存”問題。いま北米の映画館でなにが起きている?
【写真を見る】パンデミックで急加速した“映画館と配信の共存”問題。いま北米の映画館でなにが起きている?画像はCinemark Theaters(@cinemark)公式Instagramのスクリーンショット

そんななか、昨年3月に新型コロナウイルスの感染拡大の影響で北米中の映画館が休業を余儀なくされた際、ユニバーサルは公開中だった新作映画のPVOD配信に踏み切り、業界最大手のAMCと対立。
しかし一向に劇場再開の目処が立たなかった7月に、劇場公開から17日後にPVOD配信としてリリースを行い、その収益の一部を映画館に還元する条件で両社は契約を締結。その後Cinemarkとユニバーサルも、興収5000万ドルを超える見込みの作品は31日後以降の配信とした上で契約合意に至っている。

ディズニープラスのプレミアアクセスで配信も決まっている『クルエラ』。既存のサービスとの兼ね合いは?
ディズニープラスのプレミアアクセスで配信も決まっている『クルエラ』。既存のサービスとの兼ね合いは?[c]2021 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

なお、ワーナーは2021年に劇場公開されるすべての新作映画を劇場と同時に「HBO Max」で配信リリースしており、ディズニーは『クルエラ』(5月27日公開)や『ブラック・ウィドウ』(7月9日公開)などを自社の配信サービスである「ディズニープラス」に料金を追加した「プレミアアクセス」で配信予定だが、本契約によって劇場公開との同時配信から、公開17日後となることが予想されるため、どのような影響があるか注目が集まる。
パラマウントも先日北米でローンチした「パラマウントプラス」で、劇場公開から45日後に新作を配信することを発表しており、契約の内容によっては、各スタジオの今後の公開スケジュールなどに新たな動きが見られることになりそうだ。

現在北米の映画館では、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』がヒット中
現在北米の映画館では、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』がヒット中画像はCinemark Theaters(@cinemark)公式Instagramのスクリーンショット

Cinemarkのマーク・ゾラディCEOは「我々は映画ファンの皆様に対し、大作映画からファミリー映画に至るまで特別な環境を提供しつづけていきたい。今回の取り組みは、パンデミック後の映画業界を進化させる一歩になると確信しています」と語っている。
先日北米公開を迎えた『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(公開中)がヒットするなど、着実に回復の兆しを見せながらも、過去のような勢いを取り戻せていない北米の映画界。新たな一手となる今回の契約が、“映画館と配信の共存”というテーマにどのような変化をもたらすことになるのか注視していきたい。

文/久保田 和馬

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