吉永小百合、松坂桃李、広瀬すずが語り合う、『いのちの停車場』で考えた人生の“しまい方”
長年最前線を走り続ける俳優ながらも「常に成長し続けたい」と高みを目指す吉永小百合が、122本目の出演映画『いのちの停車場』(公開中)で、初めて医師役に挑んだ。
『ふしぎな岬の物語』(14)に続いてタッグを組んだ成島出監督のもと吉永と堂々わたり合ったのは松坂桃李、広瀬すずという、世代は違えど日本映画界を担う逸材たちだ。MOVIE WALKER PRESSでは吉永、松坂、広瀬の独占鼎談を行い、お互いに良い刺激を受けあえたという熱い現場を振り返ってもらった。
『いのちの停車場』の原作は、終末期医療専門病院に勤務する現役医師、南杏子の同名小説。吉永演じる医師の白石咲和子は、とある事情で東京の救命救急センターを退職し、故郷の金沢に帰郷後、在宅医療を行う「まほろば診療所」で、在宅医として働き始める。
松坂は咲和子を追って同診療所で運転手として働くことになる医大卒業生の野呂聖二役を、広瀬は訪問看護師の星野麻世役を演じた。
――吉永さんは、初の医師役を演じられてみて、いかがでしたか?
吉永「初めてだったので、やることすべてが新鮮でした。救命救急医と在宅医の両方を演じさせてもらえたことでその違いもわかり、とても勉強になりました。特に在宅医療についてはほとんど知らなかったので、ぬくもりの大切さを今回初めて感じたんです。すずちゃん演じる麻世ちゃんに叱られながらやっていきました」
広瀬「そうなんです(苦笑)。お芝居でしたが、吉永さんをすごく叱るというシーンがありました。もちろん恐縮しながらやりましたが、麻世としては遠慮してはいけないシーンだったので、そういうそぶりを見せないようにして、必死に演じたことをよく覚えています」
吉永「私は、あのシーンがすごく好きでした」
――非常に心に染み入る映画でしたが、脚本を読んで一番心に刺さったシーンを教えてください。
吉永「私は、石田ゆり子さん演じるプロの女流囲碁棋士、中川朋子さんとのシーンです」
――中川さんは、吉永さんと生前に交流されていた囲碁棋士・小川誠子七段をモデルにした原作にはないオリジナルキャラクターだそうですね。
吉永「はい。一昨年に亡くなりましたが、とても仲良くしていただいた方でした。ゆり子さんは小川さんととてもよく似ていらしたので、ゆり子さんから『先生!』と言われて抱き合うシーンは、生前のころを思いだして、胸がいっぱいになりました」
――松坂さんはどのシーンが心に刺さりましたか?
松坂「僕が演じた野呂役でいえば、(元高級官僚の)宮嶋役の柳葉敏郎さんとの共演シーンです。僕自身も息子の立場として、父親の前で正直になれない親子関係がすごくよくわかりました。本当は心のなかではちゃんと思っているのに、素直になれないし、恥じらいもあって。自分ももしああいう状況になったら、父親に対して感謝の言葉が言えるかどうか、なかなか想像できなかったです…」
広瀬「私は佐々木みゆちゃんが演じた小児がんを患う萌ちゃんとのシーンです。やっぱり純粋な子どもの口から出るストレートな質問の数々に、自分の心を乱された瞬間がありました。麻世としては『大丈夫だよ』と言うしかないんですが、自分のなかでの整理が難しかったなと思いました」