吉永小百合、松坂桃李、広瀬すずが語り合う、『いのちの停車場』で考えた人生の“しまい方”
「吉永さんがいらっしゃるだけで、吸い込まれるようなエネルギーを感じました」(広瀬)
――松坂さんや広瀬さんは、有意義だったという吉永さんとの現場で、印象に残ったエピソードを教えてください。
松坂「吉永さんは役への向き合い方がすごくて、どんどん深堀りされていく点がすごいなと思いました。例えば劇中で使うペンは、カメラが回っていないところでも普段から使っているペンとしてちゃんと使い込んでなじませている姿を見て、すごく勉強になりました」
吉永「いえいえ。台本にはあまりなかったのですが、成島監督がたくさん咲和子の書くシーンを要求なさったので、やらなきゃと思ってやっただけです。そんなにちゃんと考えてやってないんですよ」
広瀬「私も何度となく感動しました。吉永さんがいらっしゃるだけでその空間に安心感が生まれ、吸い込まれるようなエネルギーをものすごく感じました。言葉にして上手く表せないのですが、最後の二人のシーンでは、吉永さんの手や肌からからすごいものを頂いた気がします」
吉永「私こそ、お二人から本当に大きな刺激をいただきました。今回ご一緒したことで、真正面から役に向かっている素敵さが伝わってきて、いっぱいいいものをプレゼントしていただいた感じです」
――最後に、これから本作を観る方へのメッセージをお願いします。
広瀬「生きることに対してすごく希望が詰まった作品になったと思います。これまでは当たり前のように毎日が過ぎていたけど、いまはコロナ禍になって、あの時間は楽しかったなと思うことも増えたし、そういう時間をもっと大切にしたいと、完成した映画を観て思いました」
松坂「僕の両親は健在ですし、僕自身も健康に過ごせているので、命の向き合い方について深く考えてくることはありませんでした。考えなきゃいけない事柄はいっぱいあるということを、この作品を通して思い至りました。そして、自分の父や母の命のしまい方に向き合おうとも思いましたし、最後まで悔いのない生き方をしてほしいなと強く願うようになりました」
吉永「最初の撮影現場会見で、桃李さんが『命のしまい方という言葉がとても印象に残ってます』とおっしゃった時、こんなに若いのに!と驚きました。私なんて、この年齢になっても全然考えてないので。ただ今回、咲和子として、いろんな患者さんを看取っているなかで、やっぱり精一杯生きるということが、いい形で人生をしまうことにつながるんじゃないかなと思いました。また、生きていくことの大切さをかみしめられた気がします」
取材・文/山崎伸子