吉永小百合、松坂桃李、広瀬すずが語り合う、『いのちの停車場』で考えた人生の“しまい方”
「もっと前にこの役を演じていれば、自分の母親に違う提案の仕方ができたんじゃないかと」(吉永)
――今回、役として在宅医療の患者さんと向き合ってみて、どんな感想を持ちましたか?
吉永「私の母親はもう他界していますが、当時一切の治療を拒否していたんです。もしも、この役をもっと早く演じていれば、母に違った提案の仕方ができたんじゃないか、あそこまで苦しまずに天国に行けたのではないかと反省しました。余命わずかとなった時、人によってなにがベストなのかは違うし、小池栄子さん演じる芸者の寺田さんが『(入院して闘病することについて)それは生きていることじゃないわ』と言ってしまう気持ちもわかりますし、それぞれの患者さんに寄り添うことが大事だなと思いました」
松坂「僕もこの作品をやるまで在宅医療の知識はなにもなかったので、いざやってみるといろんな発見がありました。残された命のなかで患者さんの願いを叶えてあげて、患者さんだけではなく、ご家族の手助けをする仕事でもあるかもしれないと、撮影中に思い始めました」
広瀬「私も演じていてびっくりしたシーンがありました。あるシーンで、(亡くなってしまう直前で)患者さんの血圧が下がりすぎて測れないとなった時、ちょっと焦った感じで台詞を言ったら、監修の先生から『そういう時は焦らなくていいです。自宅で最後を迎えると決められた患者さんなので、あとは待つだけでいいです』と言われたんです。その瞬間、看護師の立場って苦しいなと思いましたが、寄り添うことが、一番患者さんの力になっているんだなとも感じました」
――医療監修の先生が現場にいらっしゃったことは大きかったのですね。
広瀬「そうですね、その都度リアルな台詞のトーンや仕草を、細かく教えていただきました」
「モノマネのシーンでは、一刻も早く席を立ちたかったです(苦笑)」(松坂)
――シリアスなシーンが多いなか、BAR STATIONで過ごすひとときがオアシスのようでした。なかでも、松坂さんや広瀬さんがモノマネを披露するシーンが楽しかったです。誰がなんのモノマネをするかは台本には書かれていなくて、おまかせだったとか。
吉永「西田敏行さんがする丹波哲郎さんのモノマネだけは最初から決まっていたのですが、ほかの皆さんが誰のマネをするのかは全然知らなかったです」
松坂「ト書きにはモノマネをするとだけあり、成島監督から『当日なにをやるか考えてきてね』と言われていました。普段はモノマネなんてやったことがなかったんです。それで僕はビートたけしさんをやらせていただきましたが、後日談として、どうやらすずちゃんもたけしさんをやろうとしていたそうで(苦笑)」
吉永「そうらしいですね(笑)」
広瀬「はい、実は私もたけしさんのマネをするつもりでしたが、先に松坂さんがたけしさんをやるらしいと聞いて、どうしようと思いました(苦笑)。そのあとは井上陽水さんしか浮かばなかったので、陽水さんにしました」
――モノマネは撮影の日に初披露されたのですか?それとも、本読みの段階ですでに見せていたのですか?
松坂「初めてやったのは本読みのタイミングでしたが、僕がやった時には緊張感が漂いまして…。その時は早く席を立ちたかったです(苦笑)」
広瀬「私はその本読みに参加できなくて、あとで松坂さんから『すごい緊張感のなかでやったんだよ』と聞きました。それで自分は心構えができていたのですが、撮影日にやってみたら、思っていたよりも皆さんが笑ってくださったし、石田ゆり子さんもモノマネをやってくださったので、安心感がありました」
――吉永さんは、松坂さんたちのモノマネを見ていかがでしたか?
吉永「私は見ていて感心しました。楽しかったです」
松坂「いやいや。次の話題にいきましょう(笑)」
――とても楽しそうな雰囲気が見ていて伝わってきましたよ。
吉永「BAR STATIONは本当にみんなが集う場所という感じになっていたので、無理にお芝居を作らなくても、いい雰囲気が漂っていました。そういうなかでのシーンだったので、私は1人観客になれた気分で得したなと思いました」