広瀬すずが明かす、吉永小百合から託された映画女優のバトン「映画の道を行く吉永さんに、強く憧れます」
「吉永さんから抱擁されるお芝居に、心が動かされました」
舞台挨拶や会見はもちろん、バラエティ番組でも、共演者たちとよく談笑している印象を受ける広瀬。そんな彼女が人見知りだと聞いて、いささか驚いた。「実はそうで、取材などでは大丈夫なんですが、例えば撮影の合間に、キャストの方とおしゃべりするのが苦手なんです。逆にスタッフさんとはすぐ仲良くなれるんですが」。
特に今回は、長年最前線を走り続ける俳優である吉永との共演シーンが数多くあったが「吉永さんは大先輩すぎるので、どうしゃべっていいのか最初は分からなかったです」と告白。「でも、吉永さんは、私の出演した『怒り』という映画を観てくださっていて、監督の李(相日)さんについて聞いてくださったり、松坂(桃李)さんにも、(松坂が主演を務めた)『新聞記者』について尋ねられたりと、映画の話をたくさんしてくださるんです。一緒に取材を受けていても、吉永さんが数多くの映画を観られていることに驚きました。そして、こんなふうに映画女優として人生を刻まれてきたのかと、感動さえ覚えました」。
2014年に公開された『怒り』は渡辺謙主演、李相日監督・脚本による人の心の闇をえぐるような群像劇で、広瀬は当時、オーディションで小宮山泉役を勝ち取り、その演技は高く評価された。当時、広瀬にインタビューした時、彼女が映画に対する熱い想いを口にしていたことも記憶しているが、それだけに吉永とのオフショットのひとときは、大いに堪能できたようだ。
広瀬は今回、撮影はもちろん、その後の取材を通しても、吉永の映画に向き合う真摯な姿勢に感銘を受けたそうだ。「とにかく作品や役に取り込むパワーがすごいです。原作者の南先生についての情報から、演じる役柄のことまで、とことん見たり調べたりされていました。あそこまで研究し、丁寧に取り組む方に、私は初めてお会いしました。もちろん撮影現場でも感じていましたが、こうやって一緒に取材を受けさせていただいて、吉永さんのお話を聞けば聞くほど、本当にすごいなと驚きます」。
吉永との共演シーンで、特に心に残っているのが、咲和子と麻世が抱き合うクライマックスのシーンだ。「ロケ地も建物がぎゅっと詰まっていて、逃げ道がない空間だったので、正面から咲和子先生とぶつかって、いろんな感情が動きました。自分としては、ストレートに届くものがあったんです。吉永さんが抱きしめてくれるシーンでも、ぎゅっと強く抱きしめてくれたことで、すごく救われた気がしました。その力が強ければ強いほど、咲和子先生の揺るがない決意や強さが一瞬で伝わってきたので。また、抱擁の強さも、背中を叩く回数も毎回違っていたので、私はその度にぐっときていました。ト書きには『抱きしめる』としか書いてなかったのですが、そこから膨らんだ吉永さんのお芝居に、心が動かされました」。